日本大学バスケットボール部、日本鉱業(現:ENEOS)バスケットボール部のヘッドコーチ時代を経て、1994年からジャパンエナジー(現:ENEOS)男女バスケットボール部の総監督に就任した高木彰氏。その高木氏が、「チームを強くするには?」ということを今一度考え、「チームを率いる指導者がはっきりとした理念を持てば、チーム力が底上げされるし、選手たちも上達する」という結論に達しました。高木氏が指導者の皆さんの悩みや疑問に答え、チームの発展に協力するクリニックです。
前回、「ファンダメンタル」の大切さと「習慣」ということについて述べましたが、一言で「習慣」と言っても、良い習慣と悪い習慣があり、選手たちが良いプレーをする場合は、良い習慣が身についており、ミスが出る場合は逆に悪い習慣になっている、と考えるべきでないでしょうか。
私もよくやりがちなのですが、試合中に選手がイージーなミスをした場合、つい大声で「ミスをするなよー!」と大声で怒鳴ってしまうことがあります。
冷静になってよく考えると、試合では練習以上のことができるわけもなく、つまり、練習中の悪い習慣が、ミスに繋がっているのだと思います。
ここで言う「ミス」というのは、いわゆる「ターンオーバー」というものです。
公式のBOXスコアで、「TO」と表記されていて、「Turn OVER」。ボールの保持を自ら失ってしまうことで、シュートまで行きませんから、決して得点には結びつかず、相手に得点のチャンスを与えてしまうことになり、特にパスミスは相手に簡単に得点のチャンスを与えてしまいますので、単純に考えれば、2点取れるところを、逆に2点取られてしまいますから、差し引き4点のビハインドとなってしまいます。せめてシュートで終われば、得点できるチャンスが約50%(平均的なシュート率)はあるのです。
「人間がやることにはミスがつきもの」、という言葉を良く耳にします。何かをやろうとした場合、その判断や決断そのものがミスであったり、行動する場合にミスになるわけです。そして、あらゆるスポーツのシーンでは、結局ミスをした方が負ける確率が高くっていることも事実です。
指導者も選手たちもミスを無くすことが大きなテーマにもなっています。
従って、練習の場面ではいかにミスを減らすか、いかにその努力をするか、ということが大きな課題となります。ミスが起こることは仕方がないとしても、それをいかに最小限度に減らすか、ということだろうと思います。
ミスをすること自体が実に人間的なのですが、ミスを減らそうと努力をすることも同じ様に人間的なのだと思います。
試合中のミスの減少は、練習での悪い習慣の是正と共に、いかに良い習慣を身につけるか、ということでもあります。従って、試合中につい大声を出してしまうのは、「天に向かって唾するごとく」、つまり、指導の仕方に問題があることと同じことなのかもしれませんね。(自戒の念も大いに含んで)つまり、日頃の練習からミスに対する対応が、先程述べた悪しき習慣からの脱却に繋がる、ということなのです。
先輩コーチに「ミスのチェック」という切り口について話を伺ってみると、そこはやはり指導者のフィロソフィーによって様々な対応があることも事実です。
つまり、一つのミスも妥協せずに叱る人もいれば、選手の自覚が大切で、当然、選手たちはそれに気が付いているので、注意はするけれどあまり強くは叱責しないタイプの人、等々。
この辺りになると、やはり指導者の考え方、フィロソフィーによって多少異なることはあるにしても、「練習中からのチェック」をあげる指導者が多いのも事実です。
前回述べたように、良い習慣をつけるためには、基本を繰り返し練習し、それを習慣化すれば良いのですが、悪い習慣を是正するには、ミスが出たときの対応、つまり、指導者のチェックとともに、選手のミスに対するしっかりとした自覚も大切です。
従って、練習中にミスをした場合、例えば、罰則として一往復(個人でやる場合、チームでやる場合等、ケースバイケース)ダッシュをする等、罰則を与えるようにするのも一つの方法だと思います。
「褒める」ことでよい習慣は身について行き、「叱る」ことで悪い習慣は是正されるのではないでしょうか。
とにかく、ミスを減らすための「厳しさ」は必要な要素ですが、決してゼロにならないのがミスです。しかし、ゼロに近づける努力を続けなければならないことも確かです。
「限りなくミスを減らす」。勝つことを目標にするために課された我々の大きな課題です。
完璧を求めて、限りない挑戦は続いていきます。