ENEOSバスケットボールクリニック

スペシャルアドバイザー高木彰氏のコーチングクリニック

日本大学バスケットボール部、日本鉱業(現:ENEOS)バスケットボール部のヘッドコーチ時代を経て、1994年からジャパンエナジー(現:ENEOS)男女バスケットボール部の総監督に就任した高木彰氏。その高木氏が、「チームを強くするには?」ということを今一度考え、「チームを率いる指導者がはっきりとした理念を持てば、チーム力が底上げされるし、選手たちも上達する」という結論に達しました。高木氏が指導者の皆さんの悩みや疑問に答え、チームの発展に協力するクリニックです。

第4回:選手のモチベーションを上げるには

【「Motivation」=動機を与える。】

指導者の方々はよくこんな言い方をします。「モチベが低くてさ」「なかなかモチベが上がらないんだ!」。
なにか選手達が自然とやる気になったり、やる気を失ったりするような感じがします。

また、こんなこともよく耳にします。「今日は調子が悪くてさ。シュートが入らなかったよ」「調子最悪!全然走れないんだ」「今日は絶好調!打つシュートがほとんど入ったよ!」

「モチベ」、「調子」等、何となく曖昧な表現で、その日の選手達の状態を分析します。
しかし、これらは全て選手達の精神的な「やる気」に起因しているのです。
日本のスポーツ界には昔から「心・技・体」という言い方があり、主に武道から出てきた歴史があるようです。アメリカなどでは「Heart・ Head・ Body」といわれるのが丁度この「心・技・体」にあたるものだろうと思います。

つまり、「心」(Heart)の部分が表題の「モチベーション」で、「技」(Head)は技術。これは普段から繰り返し練習をして積み上げてきたものです。「体」(Body)鍛錬した体のことで、これらが揃った時、スポーツ選手は最高のパフォーマンスを発揮します。
技術と体は日頃の練習で培われますが、「心」つまり「やる気」「動機」が本人の問題によるときが大きい、ということではないでしょうか。
指導者の悩みはこの「モチベーション」をいかに上げるか。つまり「やる気」を出させるにはどうしたら良いか、ということに尽きます。
また別の言葉で、「集中!」という声を良く聞きます。これも「やる気」の部分をたとえた言葉でしょう。
では、この「やる気」を高めるにはどういったことが大切なのか、ということに焦点を当てて考えて見たいと思います。

【目標を鮮明に】

前回の「選手を伸ばす」で、誉めて選手を伸ばすことについて述べましたが、選手達にとって成功体験は何にもましてやり甲斐(面白さ)が出てきます。そしてその成功体験が次の挑戦に繋がって行く可能性が大きくなってきます。
つまり、鮮明な目標を掲げることが選手の「やる気」に繋がるかもしれません。その目標は達成可能なものが良いでしょう。
例えば、毎年、地区大会等1回戦で敗退しているチームが、いきなり「全国制覇」という目標を掲げても、余りにも高過ぎる目標になるので実現性が低くなり、選手からしてみればかなり遠い目標になってしまいます。
「1回戦は絶対に突破しよう!」ということから始めれば良いのではないでしょうか。
そして、目標の1回戦を突破する為にはどんなことをしなければならないかを明確に打ち出します。
例えば、「ディフェンスをオールコートにして、相手を焦らせるような守り方をしよう」、
「早い攻撃をして、積極的にシュートしよう」等々、チームとしての戦略を明確にします。
そうすると、チームの戦略の中で、個人個人がどんな役割で、何をしなければいけないかが更に明確になってきます。それが選手達の練習におけるテーマになるわけです。

そして、指導者は練習の度にそのテーマについて選手が取り組んでいるか否かを常に見ていなければなりませんが、そこで叱咤激励したり、誉めたりと、いろいろな手法で選手の取り組みをサポートすることが重要です。

また、練習でも試合でも、「自分は指導者だ!」と一歩引いたような状態ではなく、「自分も選手と一緒にやってるんだ!」、という姿勢が選手達にとって信頼感に繋がる大切な要素となります。
「陣頭指揮」という言葉がありますが、真に指導者が一生懸命前向きにやっている背中を選手達に見せることが、選手達の「やる気」に繋がって行くことは間違いありません。

【選手が興味を持つ練習】

勝つことを目標にしての練習は、選手達にとってどうしても辛いものが多くなります。
しかし、選手達が興味を持つ面白い練習を考え、実行行くのも方法論として必要です。
ゲームライクな練習には誰もが興味を持つはずです。

また、練習をやるとき、「どうやるか」ということも大切ですが、「何故やるか」ということを深く理解させることがもっと重要になります。
例えば、「膝を曲げろ!」「姿勢を低く!」、ということよりも「後3cm膝を曲げろ!」とか「相手の胸の高さと自分の鼻の高さを同じにしろ!」という方が具体的な目標がよりはっきりイメージできます。
そして、何故姿勢を低くすることが必要なのかを明確に伝えることです。
「膝を曲げれば腰が低くなれば、スタンスが広くなり幅が出るから」、というように明確に伝える。
練習をするにしても、選手達が納得して取り組むことが出来れば、「やる気」になる近道になるでしょう。

では次回「チームを作るということ」でまたお会いしましょう。

高木 彰氏プロフィール

高木 彰氏

1949年
1月22日生まれ 東京都出身
1971年
日本鉱業株式会社(現:ENEOS) 入社
1978年
現役引退後 同社バスケットボール部アシスタントコーチ 就任
1979年
日本大学バスケットボール部ヘッドコーチ就任
(全日本学生バスケットボール選手権大会  3回優勝
関東男子学生バスケットボールリーグ戦  3回優勝
関東男子学生バスケットボール選手権大会 2回優勝)
1986年
日本鉱業(現:ENEOS)バスケットボール部
ヘッドコーチ 就任
(全日本総合バスケットボール選手権  2回優勝)
1994〜1998年
ジャパンエナジー(現:ENEOS)男女バスケットボール部 総監督
1998〜2003年
バスケットボール女子日本リーグ機構 理事・広報部長
2004年〜
バスケットボール女子日本リーグ機構 理事
2003〜2014年
日本文化出版(株)月刊バスケットボール技術顧問
2004〜2008年
実業団男子バスケットボールチーム ヘッドコーチ
2009〜2010年
JBAエンデバーWG委員
2010年〜
東京国体成年男子アドバイザー・技術顧問

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