ENEOSバスケットボールクリニック

スペシャルアドバイザー高木彰氏のコーチングクリニック

日本大学バスケットボール部、日本鉱業(現:ENEOS)バスケットボール部のヘッドコーチ時代を経て、1994年からジャパンエナジー(現:ENEOS)男女バスケットボール部の総監督に就任した高木彰氏。その高木氏が、「チームを強くするには?」ということを今一度考え、「チームを率いる指導者がはっきりとした理念を持てば、チーム力が底上げされるし、選手たちも上達する」という結論に達しました。高木氏が指導者の皆さんの悩みや疑問に答え、チームの発展に協力するクリニックです。

第14回:練習メニュー(ドリル)

【試行錯誤】

工夫を重ねて「何か良い練習メニューはありませんか?」

講習会やクリニックに参加すると、必ずこんな質問があります。今回はこの「練習メニュー(ドリル)」について考えてみましょう。

チーム作りの中で、チーム戦略や戦術を作り上げる時、必ず「ドリル」が大切になってきます。つまり、どんな練習方法でオフェンスやディフェンスの形を作っていくかが、指導者にとって最も頭の痛い問題です。又、基本を覚えるのにもドリルが大切になります。

そこで、前述の質問になってくるのは当然だと思います。
選手を上達させたり、チームが強くなる方法を考える訳ですから、これは中々時間の掛かることです。バスケットボールに限りませんが、そのスポーツの発祥国には、やはり先進的な「ドリル」が沢山ありますし、教本などにもいろいろな方法が書かれているものもあります。

もし指導者に選手経験があれば、自分がかつてやってきたドリルも記憶の中にあるのだろうと思います。
しかし、どのドリルを、何故使うのか、ということをしっかり考えることが大切なのです。
ある目的を達成する為にはどのドリルを使うかが大変重要なことですが、沢山あるドリルをいかに組み合わせていくかがカギになります。

例えば、ディフェンスを強化するのに、「シェルドリル」(4:4のディフェンスドリル)というのがあります。アメリカから輸入されたドリルなのですが、確かにディフェンスの強化になります。しかし、ただ単に4:4でボールを回して、ディナイやポジション取りやボールへのプレッシャーの為にだけあるのではないのです。

例えば、ベースラインを抜かせるか、抜かせないか。あるいは、レーンの中に入れるか入れないか。ウィングでボールを持たれた時、ドリブルをさせる方向をベースラインにするのか、ミドルラインにするのかによって、このドリルのやり方がかなり大きく変わってきます。つまり、チームディフェンスの考え方で、ドリルのやり方が変わってくるということです。

この、「シェルドリル」を行うには、いろいろな要素があります。
オフェンスのボールサイドカット、ブラインドサイドカット、ピック&ロール、スクリーンアウェイ、アウトサイドスクリーン、ポストカット、フラッシュポスト、ベースラインドリブル、ミドルラインドリブル、等々。
様々なオフェンスの動きの要素を想定して、違ったポイントをドリル化できるのです。

仮に、ピック&ロールに対しスイッチをさせるようにしたいとします。その場合、4:4でボールを回しながら、オフェンスにパスをしたら全てピック&ロールさせるようにして、全員がスイッチアップするようにドリル化します。
あるコーチは、ピック&ロールに対し、ファイトオーバー&ショーヘルプ、で対応させようとするコーチもいます。
その場合は、同じ様に全てファイトオーバー&ショーヘルプするようにします。

ドリルの時間も、最初の頃はディフェンスの強化の為に24秒〜30秒行いますが、ディフェンスの足が強くなってきたら、1分とか2分行っても良いでしょう。
試合中、24秒守ってシュートされ、オフェンスにリバウンドを取られて、再度ディフェンスをしなければならない場合や、取ったボールの保持を直ぐに失った場合などがあり、1分半〜2分程度ディフェンスが続く場合もあるからです。

以上のように、試合の状況を想定していろいろな条件を設定してドリルを行うことが重要です。

指導者が最も考えなければならないのは、何時、どのように、どのドリルを使うか、ということです。既存のドリルだけではなく、いかに選手にわかりやすく効果的なドリルを、工夫を重ねて作り上げていくか、ということも指導者の大きな仕事になります。

では又次回、お会いしましょう。

高木 彰氏プロフィール

高木 彰氏

1949年
1月22日生まれ 東京都出身
1971年
日本鉱業株式会社(現:ENEOS) 入社
1978年
現役引退後 同社バスケットボール部アシスタントコーチ 就任
1979年
日本大学バスケットボール部ヘッドコーチ就任
(全日本学生バスケットボール選手権大会  3回優勝
関東男子学生バスケットボールリーグ戦  3回優勝
関東男子学生バスケットボール選手権大会 2回優勝)
1986年
日本鉱業(現:ENEOS)バスケットボール部
ヘッドコーチ 就任
(全日本総合バスケットボール選手権  2回優勝)
1994〜1998年
ジャパンエナジー(現:ENEOS)男女バスケットボール部 総監督
1998〜2003年
バスケットボール女子日本リーグ機構 理事・広報部長
2004年〜
バスケットボール女子日本リーグ機構 理事
2003〜2014年
日本文化出版(株)月刊バスケットボール技術顧問
2004〜2008年
実業団男子バスケットボールチーム ヘッドコーチ
2009〜2010年
JBAエンデバーWG委員
2010年〜
東京国体成年男子アドバイザー・技術顧問

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