ENEOSバスケットボールクリニック

スペシャルアドバイザー高木彰氏のコーチングクリニック

日本大学バスケットボール部、日本鉱業(現:ENEOS)バスケットボール部のヘッドコーチ時代を経て、1994年からジャパンエナジー(現:ENEOS)男女バスケットボール部の総監督に就任した高木彰氏。その高木氏が、「チームを強くするには?」ということを今一度考え、「チームを率いる指導者がはっきりとした理念を持てば、チーム力が底上げされるし、選手たちも上達する」という結論に達しました。高木氏が指導者の皆さんの悩みや疑問に答え、チームの発展に協力するクリニックです。

第10回:オフェンスのフィロソフィー」その1

今回はオフェンスを組み立てる際に大切なことについて、2回に分けて考えてみたいと思います。

正確なプレーを心がけようオフェンスを組み立てようとする際、二つの考え方があります。
一つは、フォーメーション(決まった形を持つ動き)を中心にオフェンスを組み立てようとするもの。もう一つは、フリーランス(モーションオフェンスやパッシングゲームと呼ばれるもの)と言われるもので、選手達の自由な動きや選択を中心として組み立てようとするものです。

何れにしてもオフェンスを作る前に確実に身につけておかなければならないファンダメンタル(基本)があります。

「ファンダメンタル」という言葉はその解釈についてはまちまちですが、少なくとも以下で紹介する4つの要素は、「オフェンスのファンダメンタル」として最も大切だと考えています。何れのオフェンスを中心に作っていくにしても、重要な要素となりえます。

【オフェンスファンダメンタルの4つの要素】

(1)シュートセレクション

「シュートセレクション」というのは、何時、何処で、誰がシュートするか、ということです。オフェンスを成功させるために最も大切な要素です。勝敗を左右すると言っても過言ではないでしょう。チーム全員がシュートセレクションについて理解をしておくことが、より効果を上げることになります。
当然コーチ自身がシュートセレクションについてのフィロソフィーを持っていなければ、その大切さを指導して行くことも出来ないのです。

シュートは結果(入ったか落ちたか)ではなく、あくまでも選手個々のシュート確率や場所についてコーチがしっかり把握しておき、打つべきシュートかそうではなかったか、等、基準を持っていなければ選手達に迷いが出てしまいます。

例えば、ある場所からシュートの確率が非常に高い選手がいたとします。その選手は他の選手と違ったセレクションを持っていて良いのです。逆にシュート確率の低い選手がいます。その選手には何故シュートをしてはいけないか、どうしたらシュートが入るようになるか、時間を掛けて指導して行きます。シュートの確率が改善されたとしたら、シュートセレクションは自ずと幅が出てきます。

つまり、いかにして良いシュート・確率の高いシュートを打つことができるかが、オフェンス成功のカギを握っています。

(2)ミスのないボールハンドリング

ここで言う「ボールハンドリング」と言うのは、「テクニックの基礎クリニック」から更に進んで、試合中にシュートするまでミスなくボールを扱い、ボールをフロントコートに進めて行き、シュート前にターンオーバーしないで、パスやドリブルでいかにシュートチャンスを作るか、ということです。

(3)ボールが無い時の動き

バスケットボールは40分間の試合です。10人の選手が一つのボールを中心にゴールに攻め込む。ゴールを守ります。しかも、ボールの保持回数は同数になりますので、ディフェンスが20分。オフェンスが20分。そのオフェンスの20分を5人がパスやドリブルをしながら攻めて行きますから、単純計算で一人がボールを持っている時間が4分となります。
従って、16分間はシュートに持って行くまでどのような動きで相手をやっつけたか、ということが大切になります。確率の高いシュートを打つためにはいかにして良い動きを作るか、ということです。
そこで、重要なことは、ボールを離した(パス)後何をするか、ということです。止まったままでは【良い動き】による【良いシュート】は生まれません。

(4)ノーマークを作る

【良い動き】の一つとして、ボールを持っている以外の選手がノーマークを作る、ということがあります。人が動き、ボールが動けばそれにつれてディフェンスも動きます。
人が動く時「スクリーン」を掛けることが出来ればノーマークを作りだすことが出来ます。
基本的には一人で動いてノーマークを作ることが出来れば良いのですが、1:1でディフェンスを振り切ることは中々難しいことなので、動く味方にスクリーンを掛けて、ディフェンスにトラブルを起こさせるようにすれば、ノーマークを作るチャンスが増えてきます。スクリーンに掛け方を理解しておくことも大切です。

次回は「オフェンスのフィロソフィー」その2でお会いしましょう。

高木 彰氏プロフィール

高木 彰氏

1949年
1月22日生まれ 東京都出身
1971年
日本鉱業株式会社(現:ENEOS) 入社
1978年
現役引退後 同社バスケットボール部アシスタントコーチ 就任
1979年
日本大学バスケットボール部ヘッドコーチ就任
(全日本学生バスケットボール選手権大会  3回優勝
関東男子学生バスケットボールリーグ戦  3回優勝
関東男子学生バスケットボール選手権大会 2回優勝)
1986年
日本鉱業(現:ENEOS)バスケットボール部
ヘッドコーチ 就任
(全日本総合バスケットボール選手権  2回優勝)
1994〜1998年
ジャパンエナジー(現:ENEOS)男女バスケットボール部 総監督
1998〜2003年
バスケットボール女子日本リーグ機構 理事・広報部長
2004年〜
バスケットボール女子日本リーグ機構 理事
2003〜2014年
日本文化出版(株)月刊バスケットボール技術顧問
2004〜2008年
実業団男子バスケットボールチーム ヘッドコーチ
2009〜2010年
JBAエンデバーWG委員
2010年〜
東京国体成年男子アドバイザー・技術顧問

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