日本大学バスケットボール部、日本鉱業(現:ENEOS)バスケットボール部のヘッドコーチ時代を経て、1994年からジャパンエナジー(現:ENEOS)男女バスケットボール部の総監督に就任した高木彰氏。その高木氏が、「チームを強くするには?」ということを今一度考え、「チームを率いる指導者がはっきりとした理念を持てば、チーム力が底上げされるし、選手たちも上達する」という結論に達しました。高木氏が指導者の皆さんの悩みや疑問に答え、チームの発展に協力するクリニックです。
シュートクロックが24秒に変更になって、オフェンスは前にも増して難しくなったような気がします。
30秒のシュートクロックが24秒に短縮された訳ですが、20%短縮されたことでシュートに持って粋までの組み立てが非常にスピーディーになりました。
以前はフォーメーションプレイなどを使って、30秒を目一杯使ってディフェンスを崩すこともできたのですが、現在のルールでは、決まった動きを一つか二つ入れただけでも、直ぐにシュートクロックぎりぎりとなるケースが多くなりました。
従って、短時間での選手の判断力や実行力がオフェンスのカギを握るようになったのではないでしょうか。
つまり、オフェンスではディフェンスの位置や状態を良く読んで判断し、そしてプレーを決める、という瞬間的な判断力・実行力が必要になってくるわけです。
前回述べた「オフェンスファンダメンタルの4つの要素」を選手達がしっかりできるようになることが非常に大切になってきます。
そこで、今最も主流となっているモーションオフェンスについて少し考えてみたいと思います。
私もコーチを始めたての頃、ディフェンスはある程度約束ごと(ルール)が明確になっていて(ボールプレッシャーやヘルプ等)、脚力を強化して行けば上達して行きますが、オフェンスの組み立てが良く判りませんでした。
そこで、決まった動き(フォメーション→ルール)を作ってオフェンスを組み立てたのですが、約束ごとで成り立っていますから、自分でも良く判り易く、練習でもチェックし易かったのです。
しかし、選手達も慣れてきて動き方を完全にマスターすると、簡単にゴールするチャンスがありながら、決まった動きに拘り、その動きをやろうとし過ぎる傾向が出てきました。
「得点チャンスがあればシュートしろ!」と言うのですが、ゴールを見ないでパスをしてしまったり、ノーマークになっていても気付かず動いてしまうような状況が出てきました。
そんな時、「モーションオフェンス」がアメリカから渡ってきました。
モーションオフェンスと言うのは、ディフェンスにヘルプさせないように、特にヘルプサイドでスクリーンを掛け合って「動く」ことを指していますが、選手一人一人がいかに的確にプレーの判断をするかが成功のカギを握っているのです。
「モーションオフェンス」の原点は前述の「4つの要素」を組み合わせたものですが、選手個々の能力を上げる為には簡単なルールを作ることです。そうすると選手の判断力が高くなり、創造力も高まってきます。
最も大切なことは、パスした選手が次に何をするかと言うことで、
等、プレーのセレクションは沢山ありませんが、これらの動きを組み合わせることで5人に均等に得点チャンスが生まれ、個々の能力も高くなってきます。つまり、傑出した選手がいなくても、良いオフェンスができるようになるのです。
難しいオフェンスを指導者がシンプルに考えることで、選手の上達を早めて行くのではないでしょうか。
モーションオフェンスの詳細はまた別の機会に述べてみたいと思います。
次回は「ファーストブレーク」でお会いしましょう。