ENEOSバスケットボールクリニック

スペシャルアドバイザー高木彰氏のコーチングクリニック

日本大学バスケットボール部、日本鉱業(現:ENEOS)バスケットボール部のヘッドコーチ時代を経て、1994年からジャパンエナジー(現:ENEOS)男女バスケットボール部の総監督に就任した高木彰氏。その高木氏が、「チームを強くするには?」ということを今一度考え、「チームを率いる指導者がはっきりとした理念を持てば、チーム力が底上げされるし、選手たちも上達する」という結論に達しました。高木氏が指導者の皆さんの悩みや疑問に答え、チームの発展に協力するクリニックです。

第9回:ディフェンスのフィロソフィー」その2

前回はディフェンスの考え方について述べてみましたが、今回は実際のディフェンスの形態について考えてみたいと思います。

【マンツーマンディフェンスの基本】

ミニバスケットボールの普及や、NBAの影響、ルールの進化などだと考えられますが、年々選手達の能力、特にボールハンドリングやシュート力が格段の進歩を遂げているように見受けられます。

その昔(かなり古いので読者の方に叱られるかもしれませんが)は「シュートを打たせて、リバウンドを取り、速攻!」というように、どちらかといえば相手のシュートが落ちるのを待つ。というようなディフェンスだったような気がします。「ノーマルマンツーマン」というような言い方をしていた記憶があります。
当然、ゴール下を固めようとするゾーンディフェンスが主流になった時期もありました。
つまり、「リバウンドを取って速攻」に最も近いディフェンスだったのです。

所が、現在のバスケットボールでは、選手のシュート技術の進歩で、待つディフェンスをしているとオフェンスのシュート率がかなりハイアベレージになってしまいます。
従って、オフェンスのプレー一つ一つを自由にさせないように、より強くプレッシャーを掛け、最終的にシュートを苦しい状態で打たせることが必要になってきました。

かつて、アメリカの大学バスケットボールを多くの指導者が学びに訪れ、「プレッシャー・マンツーマンディフェンス」を学び帰国し始めてから、一気にそれが全国に普及し行った、と考えられます。

【プレッシャー・マンツーマンディフェンス】

そのディフェンスのポイントは、オフェンスの攻撃サイドのハーフコートの、更に縦に割った半分。つまり、全コートの1/4を5人で守る。という考え方です。

図1
図1

図2
図2

コートを1/4にして、ゴールとゴールを結ぶ仮想ミドルラインから見て、片方にオフェンスが3人。それに対しディフェンスは5人。というものです。一見この図を見ると、ゾーンディフェンスのようにも見えます。
一旦右側に置かれたボールは、簡単に逆サイドに展開させないで、半分を集中的に守ろうとする考え方で、ミドルライン側へは絶対に行かさない。つまり、ボールがミドルラインにあると、左右どちらにでも展開されるからです。
いろいろな試合を見ていると、コーチから「ディレクション!」という声が聞こえますが、その声がこのポジションのことです。

入れてはいけないエリア

図3
図3

そして、フリースローレーンはシャットアウトし、中に入ろうとする選手に対しては、胸で押さえて絶対に入れない。という守り方をします。
そして、問題はベースラインへのドリブルをどうするか、ということですが、私も当初は、ドリブルをさせてもよし(ベースラインを開ける)。としていました。
つまり、ヘルプマンがそれを止めることができるからです。
しかし、年々パス技術やオフェンスの戦術も進歩してきた為、ヘルプによってきた場合、それを予想してボールをスキップされるようになって来ました。
すると、どんなにプレッシャーを掛けていても、ヘルプからボールにクローズアウトするのに間に合わない現象が出始めてきました。

ウィングからドリブルされた時の付きかた

図4
図4

ドリブラーに対しては、頭を低くして、頭でボールを追うようについていきます。
(足が後からついてくるように)

そこで、ベースラインも閉めるようにすれば、ヘルプのポジションも自分のマークマンに近づくことができるようになってきます。

図2ではヘルプポジションがミドルラインを跨いでいますが、ベースラインを閉めた場合、図4のようになります。
私は、ヘルプサイドはミドルラインにつま先が触れる位置、と言っています。

この形態が基本となって、オールコートディフェンスをする時でも、このディフェンスを延長して行けばいいのです。

ディフェンスは強い心で最後になりますが、ディフェンスのサイドステップと言うのは通常の人間の動きには無い動作です。フィジカル的にサイドステップ(スライドステップ)がしっかりできるようになってからディフェンスのドリルを始めるべきです。
また、ディフェンスの動きはオフェンスの意思に従って動かなければなりません。ディフェンスの足の準備ができたら、「絶対に相手にやられない!」という強い気持ち、「ハート」で守ることが大切です。

いかがでしょうか?お解りいただけたでしょうか?

ディフェンスのポジションやスタンスについては、「大山コーチの基礎クリニック」をご覧ください。
また、ご意見・ご質問がございましたら、本サイトのQ&Aコーナーまでお寄せください。

次回は「オフェンスのフィロソフィー」その1でお会いしましょう。

高木 彰氏プロフィール

高木 彰氏

1949年
1月22日生まれ 東京都出身
1971年
日本鉱業株式会社(現:ENEOS) 入社
1978年
現役引退後 同社バスケットボール部アシスタントコーチ 就任
1979年
日本大学バスケットボール部ヘッドコーチ就任
(全日本学生バスケットボール選手権大会  3回優勝
関東男子学生バスケットボールリーグ戦  3回優勝
関東男子学生バスケットボール選手権大会 2回優勝)
1986年
日本鉱業(現:ENEOS)バスケットボール部
ヘッドコーチ 就任
(全日本総合バスケットボール選手権  2回優勝)
1994〜1998年
ジャパンエナジー(現:ENEOS)男女バスケットボール部 総監督
1998〜2003年
バスケットボール女子日本リーグ機構 理事・広報部長
2004年〜
バスケットボール女子日本リーグ機構 理事
2003〜2014年
日本文化出版(株)月刊バスケットボール技術顧問
2004〜2008年
実業団男子バスケットボールチーム ヘッドコーチ
2009〜2010年
JBAエンデバーWG委員
2010年〜
東京国体成年男子アドバイザー・技術顧問

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