ENEOSバスケットボールクリニック

スペシャルアドバイザー高木彰氏のコーチングクリニック

日本大学バスケットボール部、日本鉱業(現:ENEOS)バスケットボール部のヘッドコーチ時代を経て、1994年からジャパンエナジー(現:ENEOS)男女バスケットボール部の総監督に就任した高木彰氏。その高木氏が、「チームを強くするには?」ということを今一度考え、「チームを率いる指導者がはっきりとした理念を持てば、チーム力が底上げされるし、選手たちも上達する」という結論に達しました。高木氏が指導者の皆さんの悩みや疑問に答え、チームの発展に協力するクリニックです。

第7回:「バスケットボールの経験者ではない指導者に向けて」

指導者講習会へお邪魔する時、「バスケットボール経験のない方はいらっしゃいますか?」と尋ねると、必ず数名の方が手を上げておられます。
そして、「どうやって指導したらよいか判らない」と悩みを相談される先生方がおられます。

特に公立中学校の場合、先生が数年単位で移動になり、また新しい先生が顧問になられる。
これは仕方のないことですが、経験の無いバスケットボール部の顧問になって、子供達を指導することは本当に大変なことだと思います。

そこで、今回はバスケットボールの経験が無く、顧問として頑張っておられる先生方にお送りしたいと思います。

【仲間作りから始める】

私は講習会等で良くこんな話をします。

先ずは、「チーム」としての意識を持たせてください。皆が一緒に何かをやる、と言うような。そして子供達が試合会場などに行った時、誰でも良いから大きな声で並んで挨拶をさせてごらんなさい。すると、「先生の所の子供達礼儀正しいね!と言ってベテランの先生が声を掛けて来るかもしれませんよ。そしたらしめたもので、そこで、「私はバスケットボールの経験が無いので、せめて挨拶だけでもちゃんとやらせたいので」と言ってください。
それが先生の「フィロソフィー」になるわけです。そこから輪が広がって行き、何でも相談できたり、教えてもらったりできるようになります。

と言うような話をします。要は、「掴みはOK」ということでしょうか。

教本を読んだり、講習会に出席したり、勉強の場は沢山あり、方法論(指導書等)も沢山出版されています。しかしいかにせよ机上の話。実際に現場で見たり聞いたりするのが一番の早道だと思います。
子供たちが好きなバスケットボールを、一生懸命やろうとしているわけですから、何とか上手くして上げたい、強くしてあげたい、と考えたいですね。しかし、経験が無ければ何をどうするか判らない。
そこで、先生方自らその場所へ飛び込んで行く、と言う訳です。子供たちはそれを見ています。「先生熱心だな〜」、というようになれば扉は自然と開いていくのではないでしょうか。

【先生の情熱に感謝!】

話は変わりますが、私が中学時代お世話になった先生(近隣の中学校の教諭)の話です。自分が通っていた中学の先生とも大変仲が良く、何時も試合会場で声を掛けて頂いたのを良く覚えています。
私が中学生だった頃は、審判もされていて非常に上手で、オフィシャルやタイマーなども、実にルールに詳しく、悪いプレーをすると叱られたこともありました。その先生の中学校は東京の区内でもかなり強豪とされるチームだったと思います。
しかし、かなり後(今から数年前)になって知ったのですが、その先生はバスケットボールの経験が全く無く、顧問になってから懸命に勉強されていた、ということでした。
「お前の所のA先生から、審判をやってみないか?と言われたんだ。最初は何が何だか判らなかったけれど、A先生から何時も色々なことを教わっていたんだぞ。それでこんなになったんだよ」、というお話をお聞きして驚いたものでした。
私事で恐縮ですが、未だにバスケットボールに携わっていられるのは、そんな熱心な先生方から育てられた経験があったからだと思っています。

私は良く「コーチは孤独ですね」。と言うような話を講習会等でしますが、そうではなかったのかもしれません。本人の考え方次第で、仲間は沢山いると言うことでしょうか。
「成せばなる」という言葉があります。「絶対にできる」と言う信念があれば、通じるのではないでしょうか。
極近くにいる仲間たちや先輩たちが、何にも増して良い教本と言うことです。

では次回「ディフェンスのフィロソフィー」でまたお会いしましょう。

高木 彰氏プロフィール

高木 彰氏

1949年
1月22日生まれ 東京都出身
1971年
日本鉱業株式会社(現:ENEOS) 入社
1978年
現役引退後 同社バスケットボール部アシスタントコーチ 就任
1979年
日本大学バスケットボール部ヘッドコーチ就任
(全日本学生バスケットボール選手権大会  3回優勝
関東男子学生バスケットボールリーグ戦  3回優勝
関東男子学生バスケットボール選手権大会 2回優勝)
1986年
日本鉱業(現:ENEOS)バスケットボール部
ヘッドコーチ 就任
(全日本総合バスケットボール選手権  2回優勝)
1994〜1998年
ジャパンエナジー(現:ENEOS)男女バスケットボール部 総監督
1998〜2003年
バスケットボール女子日本リーグ機構 理事・広報部長
2004年〜
バスケットボール女子日本リーグ機構 理事
2003〜2014年
日本文化出版(株)月刊バスケットボール技術顧問
2004〜2008年
実業団男子バスケットボールチーム ヘッドコーチ
2009〜2010年
JBAエンデバーWG委員
2010年〜
東京国体成年男子アドバイザー・技術顧問

TOP