ENEOSバスケットボールクリニック

スペシャルアドバイザー高木彰氏のコーチングクリニック

日本大学バスケットボール部、日本鉱業(現:ENEOS)バスケットボール部のヘッドコーチ時代を経て、1994年からジャパンエナジー(現:ENEOS)男女バスケットボール部の総監督に就任した高木彰氏。その高木氏が、「チームを強くするには?」ということを今一度考え、「チームを率いる指導者がはっきりとした理念を持てば、チーム力が底上げされるし、選手たちも上達する」という結論に達しました。高木氏が指導者の皆さんの悩みや疑問に答え、チームの発展に協力するクリニックです。

第5回:「チームを作るということ」その1

【地図の見方】

“自分が今何処にいて、何処に行きたいか。”

指導者が、チームを作る上で最初に考えなければならないことだと思います。
つまり、今のチームがどの位置にいて、これから何処へ向かって行くのか? 前回「目標」の設定について述べましたが、その目標にアプローチするためには道程を選ぶことが大切になります。

話は少し変わりますが、例えば、家族や友達同士でドライブに出かけたとします。かつては、初めて訪れる目的地に行くためにはおそらく地図を頼りにする人が多かったと思います。今は、「カーナビ」という便利なツールがありますから、「300m先を左折してください」というように、女性の声でナビゲーションしてくれます。そんな便利なものがない時代は、出発前に皆で地図を見ながら、どの道を通って、○○まで行ったらENEOS(ちょっとCM)のガソリンスタンドのところを左折。というように、出発前に先ずはミーティングをやったものです。そして、ナビゲーションシートに座っている人は地図の見方や、現在地をよく理解できている人にロードマップを持ってもらって、「ポイントに来たら指示してね。さー!出発!」と、やったものでした。
春であれば花畑が多いところを選ぶでしょうし、秋であれば紅葉の綺麗なところを選んで行こう、というように目的に行くまでの最良の道を選んで行きます。

そして、まるで一つのチームになったように、車に乗っている人全員がそれぞれの役割を持ちながら、目的地に向かいます。しかし、進む道は何時も平坦であるとは限りません。土砂崩れで通行止めになっているところもあるでしょう。そんな時、また地図を見て違う道を探しながら進んでいきます。
ここでこのチームでもっとも大切人は、実はナビゲーターではないでしょうか。もしナビゲーターが地図の見方が判らない人だったらどうでしょうか?チームの現在地やこれから向かう目的地への道が全く見えてこないことになってしまいます。何時まで経っても目的地に到着できず、全員が迷子になってしまうかもしれません。

“自分が今何処にいて、何処に行きたいか。”
地図をしっかりと見ている指導者の背中を見せることで、向かっている方向を示すことが大切です。
コーチ(COACH)というのは、「馬車の御者」という意味です。つまり、道を良く知っている「NAVIGATOR」という意味でもあると私は考えています。

【役割とチームワーク】

「チームワークって何?」、と子供たちに聞くと、必ず返ってくる言葉は「チームの輪」、「皆で協力すること」等々の答えが返ってきます。
TEAM WORK=(統制のとれた)協同作業、とありますからその答えは間違いではありません。しかし、一歩踏み込んで考えると、チームの一人一人が与えられた役割を全うすることで、チームとして機能する、または、チームとしての仕事をするという意味でもあります。
個人個人が自分の仕事をやり遂げることで、チームが機能するのです。

試合に出ている選手も、ベンチで応援する選手もチームの一員です。中には全く試合に出ることができない選手もいます。
しかし、チームを構成する選手全員が、○○中学校のバスケットボール部の選手です。
その一人一人に役割を与え、その役割を全うするように指導するのも、チーム作りの土台となるでしょう。
もちろん、試合に出て懸命にチームの勝利のために戦っている選手も大切ですが、むしろ、いわゆる縁の下の力持ち、表面に出ることがない選手たちにも役割があって、その役割を一生懸命にやっている選手たちも賞賛してあげることも大切なことです。
全員が「チーム」なのです。
シュートを入れる選手、パスをする選手、ボールを運ぶ選手、励ましの声を出す選手、試合に出る選手が脱いだジャージを畳む選手等々。全員が「チーム」なのです。

「One for all, All for one」一人はチームのために、チームは一人のために。
自分はチームのためにどうあるべきか、自分にとってチームとは何か。そんなことを選手たちに考えさせることも指導者の大きな仕事になります。

では次回「チームを作るということ」その2でまたお会いしましょう。

高木 彰氏プロフィール

高木 彰氏

1949年
1月22日生まれ 東京都出身
1971年
日本鉱業株式会社(現:ENEOS) 入社
1978年
現役引退後 同社バスケットボール部アシスタントコーチ 就任
1979年
日本大学バスケットボール部ヘッドコーチ就任
(全日本学生バスケットボール選手権大会  3回優勝
関東男子学生バスケットボールリーグ戦  3回優勝
関東男子学生バスケットボール選手権大会 2回優勝)
1986年
日本鉱業(現:ENEOS)バスケットボール部
ヘッドコーチ 就任
(全日本総合バスケットボール選手権  2回優勝)
1994〜1998年
ジャパンエナジー(現:ENEOS)男女バスケットボール部 総監督
1998〜2003年
バスケットボール女子日本リーグ機構 理事・広報部長
2004年〜
バスケットボール女子日本リーグ機構 理事
2003〜2014年
日本文化出版(株)月刊バスケットボール技術顧問
2004〜2008年
実業団男子バスケットボールチーム ヘッドコーチ
2009〜2010年
JBAエンデバーWG委員
2010年〜
東京国体成年男子アドバイザー・技術顧問

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