ENEOSバスケットボールクリニック

スペシャルアドバイザー高木彰氏のコーチングクリニック

日本大学バスケットボール部、日本鉱業(現:ENEOS)バスケットボール部のヘッドコーチ時代を経て、1994年からジャパンエナジー(現:ENEOS)男女バスケットボール部の総監督に就任した高木彰氏。その高木氏が、「チームを強くするには?」ということを今一度考え、「チームを率いる指導者がはっきりとした理念を持てば、チーム力が底上げされるし、選手たちも上達する」という結論に達しました。高木氏が指導者の皆さんの悩みや疑問に答え、チームの発展に協力するクリニックです。

第10回:世界へ羽ばたけ!!

第30回ロンドンオリンピックは8月12日に閉幕しました。メダル獲得だけが評価されるものではありませんが、日本が獲得したメダル総数は38となり、史上最高の獲得数になりました。
メダル獲得のいかんに関わらず、日本の選手達がロンドンの舞台で活躍している姿を見ていると、ついつい夢中になってしまい寝不足気味な2週間でした。
特に今回、本来は個人競技種目で「団体(チームジャパン)」となって戦って良い成績を収めた競技がいくつかありました。今までと少し違った印象を受けたのはおそらく私だけではないはずです。
「結束力」の素晴らしさをみたようで、日本人の心に何か大きな変化がでてきたのではないでしょうか。

どんな競技でも同じですが、「日本代表選手」「日本代表チーム」があります。オリンピックや国際試合に日本を代表して、胸には日の丸をつけ戦う選手・チームです。
日本を代表して外国選手、チームと闘うわけですから、大げさな言い方になりますが「国の威信」を掛けて試合をし、雌雄を決することになるのです。
当然各競技によって世界における競技力レベルが異なりますから、そのポジションは様々。それぞれの競技団体は良い成績を収める為に関係者が一丸となって強化を行っていますから、国際舞台で結果がでればやはりこれからの強化体制も大きく変わってくるものと思います。
我々も表彰式で日の丸を見るたび日本人として何となく誇らしく思うものです。

残念ながら今回はバスケットボールの日本代表選手達の雄姿を見ることができませんでしたが、長年バスケットボールに携わってきた一人の人間としては、「次はバスケットボールも!」という思いで一杯でした。
そこで我々としては日本のバスケットボールにおける世界的なポジションというのが気になります。
ロンドンオリンピック終了時点のFIBA(国際バスケットボール連盟)世界ランク(大陸選手権や年齢カテゴリーの成績をポイントに換算)は、日本男子が35位。アジアでは中国11位 イラン20位、レバノン25位 ヨルダン30位 韓国33位。女子は日本が18位でアジアでは、中国8位、韓国11位、チャイニーズ・タイペイ25位、マレーシア38位といったところです。
中国は男女ともオリンピックを始め幾度となく国際舞台に立っている実績がありますが、やはり長身選手が多い中国が有利で、身長が低い他のアジア諸国は不利なのでしょうか。

しかし、小さいからといって最初から諦めていたのでは、現在バスケットボールを夢中になってやっている子供たちにとって夢のない話になってしまいます。
そこで、日本人特有の長所を前面に出して日本独自の戦い方を考えだし、まずはアジアの頂点に立とうとするチャレンジをしたいではありませんか。
いきなり国際舞台というよりまずはアジアをクリアすることだと考えます。
これまでも日本は各カテゴリーで男女とも世界の舞台に立った実績があるのですから、そのときのノウハウをもう一度見直す必要があると思っています。しかし、これまで何人もの指導者が携わってきているのも関わらず、それまでの様々な情報が隅々まで伝わりきれていないような気がします。
先輩指導者の方にいろいろなお話を伺うと、【平面の戦い】【リバウンド】【スピード】【ディフェンスの変化】【フェイク技術】【パスの強さ】【シュート確率】【プレーの正確さ】【精密さ】【我慢強さ】【結束力】等々、非常に幅広く多くの要素が必要であることがわかります。
これらはあくまでもトップチーム(代表チーム)が国際ゲームで必要な技術であり戦術なのですが、もし本当に必要な要素であれば子供の頃からその技術や基本を習得させなければならないはずです。しかし「日本固有のバスケットボールの戦い方」が整理されていないので、バスケットボールの現場で苦労している指導者の方々がそれぞれ独自の考え方で指導されているのだろうと思います。日本人の特性を活かした戦い方が何なのかをよく議論の上、意識統一し、若年層まで徹底して育成する必要があります。そうすればフル代表に入る頃にはアジアや世界で通用する選手なっているかもしれません。

ロンドンオリンピックが終わって次はブラジル、リオデジャネイロ五輪。2020年は東京が立候補しています。熱が冷めないこの時期にできるだけ早く次に向かって動きださなくてはなりません。
日本人だからできること。日本人だけにしかできないこと。かつて「日本の生産技術力は世界一」と言われた経済大国です。スポーツの現場も同じことがいえるはずですし、バスケットボールだって世界一の技術力を持てないはずがありません。
これからもたくさんの指導者の方々と一緒に日本独自の戦い方を模索し、今頑張っている子供たちに世界へ羽ばたいてもらいたいと思います。

高木 彰氏プロフィール

高木 彰氏

1949年
1月22日生まれ 東京都出身
1971年
日本鉱業株式会社(現:ENEOS) 入社
1978年
現役引退後 同社バスケットボール部アシスタントコーチ 就任
1979年
日本大学バスケットボール部ヘッドコーチ就任
(全日本学生バスケットボール選手権大会  3回優勝
関東男子学生バスケットボールリーグ戦  3回優勝
関東男子学生バスケットボール選手権大会 2回優勝)
1986年
日本鉱業(現:ENEOS)バスケットボール部
ヘッドコーチ 就任
(全日本総合バスケットボール選手権  2回優勝)
1994〜1998年
ジャパンエナジー(現:ENEOS)男女バスケットボール部 総監督
1998〜2003年
バスケットボール女子日本リーグ機構 理事・広報部長
2004年〜
バスケットボール女子日本リーグ機構 理事
2003〜2014年
日本文化出版(株)月刊バスケットボール技術顧問
2004〜2008年
実業団男子バスケットボールチーム ヘッドコーチ
2009〜2010年
JBAエンデバーWG委員
2010年〜
東京国体成年男子アドバイザー・技術顧問

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