ENEOSバスケットボールクリニック

スペシャルアドバイザー高木彰氏のコーチングクリニック

日本大学バスケットボール部、日本鉱業(現:ENEOS)バスケットボール部のヘッドコーチ時代を経て、1994年からジャパンエナジー(現:ENEOS)男女バスケットボール部の総監督に就任した高木彰氏。その高木氏が、「チームを強くするには?」ということを今一度考え、「チームを率いる指導者がはっきりとした理念を持てば、チーム力が底上げされるし、選手たちも上達する」という結論に達しました。高木氏が指導者の皆さんの悩みや疑問に答え、チームの発展に協力するクリニックです。

第3回:空気を読む

4月を迎えると新1年生、新上級生、新社会人が街中にあふれています。
この時期は期待と不安を胸に、着慣れない制服やスーツ姿のフレッシュマンがいっぱいで、見ている我々も何となくわくわくしてしまいます。

毎年この時期になると新社会人たちに「○○型社会人」というニックネームが付けられます。
昨年は「エコバック型」で今年は「ETC型」だそうです。
1973年から、公益法人 日本生産性本部の調査研究でその年の新入社員を、世相を反映させてその傾向で命名しマスコミに発表しているようです。第一号(1973年)は「パンダ型」『おとなしく可愛いが、人になつかず世話が大変』だそうで、その後「瞬間湯沸かし型」(S57年)、「栄養補助食品型」(H12年)、「カーリング型」(H20年)等々が面白いと思います。もれなくひとくくりにするのが皆さん好きなようですね。そうではない人もいるだろうに。

報道関係に配布された資料には「ETC型」の解説が書いてあって、『性急に関係を築こうとすると直前まで心の「バー」が開かないので、スピードの出しすぎにご用心。IT活用に長けているが、人との直接的な対話がなくなるのが心配。理解していけば、スマートさなど良い点もだんだん見えてくるだろう。"ゆとり"ある心を持って、上手に接したいもの。』 高速道路のETC料金所のように表現されていて、まさに世相を反映しているようです。

1992年にゆとり教育制度が始まったとき小学校1年生だった人たちが新社会人となって来ていますが、初代は2008年に社会人となっていて、今年の社会人1年生はゆとり教育世代の3代目になります。のびのび育っている世代だそうです。

これは極一般的な話になりますが、社会人の先輩たちからは、「マナーができてない」「空気が読めない」「先輩にあいさつしない。席を譲らない」「進んで人にとけ込もうとしない」等々の批判もあるそうで、コミュニケーションが苦手な世代だといわれているようです。
しかし、「マナーが良い」「空気を読む」というようなことは言葉のコミュニケーションは必要のないことで、周りの状況を「察する」「感じる」ということなわけですから、コミュニケーションというより「洞察力」というものではないでしょうか。いわば「考えれば解るだろ?」ということですが、裏返すと「言われないとわからない」ということにもつながっているらしいのです。

特に「空気を読む」というのは「その場の雰囲気を読む」ということですから、その場の状況を判断して対処方法を的確に判断することですが、この辺りが非常に難しく苦手な傾向があるのかもしれません。
昔の人たちはなんとなく察し合うコミュニメーションということができていたようですから、言葉に出さないコミュニケーションが存在しました。「阿吽の呼吸」などと言われたものがそれです。

また、先ほどのコミュニケーションが苦手だとされる人たちは、言われたことは言われた通りやろうとするが、自分で目標を設定してその目標に向かって頑張ることが苦手なのかもしれません。
この辺りが「マナーができていない」という批判にもつながっているのだと思います。
例えば、お年寄りが目の前に立っていても席を譲らない。優先席に堂々と座っている。こんな光景を見ていて「席を譲ってあげなさい」と言うとさっと譲ることはするようなので、やはり言われたことはしっかりやれるようですが、お年寄りが電車に乗ってきた時点でその雰囲気を察して自ら「どうぞ」と声をかけていくような気遣いをしてくれれば申し分ありません。
自分の周りに起こるいろいろなことに対して常に気配りをしておくことも大切なことなのですが、携帯電話やゲームに夢中で気が付かないなど。自分のやっていることがあくまでも中心になってしまっている傾向があるのです。当然この年代のすべての人をひとくくりで評価することはでききませんが。

バスケットボールをやっている子供たちには、先生やコーチの方々、親御さんが「コミュニケーションの大切さ」「チームメートを気づかうこと」「状況を正しく判断すること」などを求めているものだと思います。
そんな子供たちは小学校を卒業すると10年、中学校を卒業すると7年で社会人となります。もうあっという間です。
勝つことを目標にすることは大事なことです。しかしバスケットボールのコートの上だけではなく、コートを離れたときでもそういったことが大切だと伝えて頂き、社会人となってピカピカのスーツに身を包んだとき、その年の世相を当てはめた「○○型社会人」というひとくくりの枠から、良い意味で大きくはみ出す社会人にしていきたいではありませんか。

さて来年はどんな呼び方をされるのでしょうか?

高木 彰氏プロフィール

高木 彰氏

1949年
1月22日生まれ 東京都出身
1971年
日本鉱業株式会社(現:ENEOS) 入社
1978年
現役引退後 同社バスケットボール部アシスタントコーチ 就任
1979年
日本大学バスケットボール部ヘッドコーチ就任
(全日本学生バスケットボール選手権大会  3回優勝
関東男子学生バスケットボールリーグ戦  3回優勝
関東男子学生バスケットボール選手権大会 2回優勝)
1986年
日本鉱業(現:ENEOS)バスケットボール部
ヘッドコーチ 就任
(全日本総合バスケットボール選手権  2回優勝)
1994〜1998年
ジャパンエナジー(現:ENEOS)男女バスケットボール部 総監督
1998〜2003年
バスケットボール女子日本リーグ機構 理事・広報部長
2004年〜
バスケットボール女子日本リーグ機構 理事
2003〜2014年
日本文化出版(株)月刊バスケットボール技術顧問
2004〜2008年
実業団男子バスケットボールチーム ヘッドコーチ
2009〜2010年
JBAエンデバーWG委員
2010年〜
東京国体成年男子アドバイザー・技術顧問

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