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新たにサンフラワーズの指揮を執るティム・ルイスヘッドコーチ interview

2023-24シーズンより、ENEOSサンフラワーズの指揮を執ることとなったティム・ルイスヘッドコーチ。母国であるイギリスの男子代表チームのアシスタントコーチやカタール、タイの男子代表ヘッドコーチ、さらにはNBAチームのアソシエイトヘッドコーチなどを歴任し、豊富なキャリアを持つ指揮官だ。

新たなスタートを切ったサンフラワーズはどのようなバスケットを披露してくれるのか。采配を振るう新ヘッドコーチに今シーズンへの思いを聞いた。

はじめに、ヘッドコーチのオファーを受けてから、引き受けるまでの経緯を教えてください。

決して難しい決断ではありませんでした。以前にENEOSのヘッドコーチを務めていたトム・ホーバスさん(男子日本代表ヘッドコーチ)や佐藤清美さん(秋田銀行女子バスケット部ヘッドコーチ)、佐久本智さん(ENEOS監督)とは面識もありましたし、サンロッカーズに居たころ同じ柏市を拠点としていたのでENEOSとはつながりもありました。ですから、迷うことなくすぐに返事をしました。トップクラスの組織で、豊かな歴史があるチームだと思っています。

女子チームの指揮を執るのははじめて。新たな挑戦ですね。

そうですね。ただ、女子チームのコーチははじめてではありますが、私には娘が3人いて、昔から家ではよく女子バスケットの試合を見ていました。娘は3人とも20代後半です。

サンフラワーズには娘さんと同世代の選手も多いですね。

はい。今は娘が15人いるような毎日です。

日本(サンロッカーズ渋谷)でヘッドコーチをした経験もありますが、チームに加入する前のENEOSはどういった印象だったのでしょうか?

外から見ていると、常に勝っている感じがしましたね。そして勝利へのカルチャーがあり、常にハードにプレーしていた印象です。

チームに加入してからもその印象は変わらないですか?

期待を超えるものでした。選手はみんなバスケットに対する賢さがあり、新しいプレーブックなど、こちらの与える情報が多くても、それ全部受け入れる。そして分からないところは質問をし、コミュニケーションもしっかり取ります。選手たちの好奇心の高さには驚かされました。

来日前はオンラインミーティングを重ねていました。その中で9月のオータムカップでは3ポイントシュートを積極的に打つようにという指示でしたが、どのような意図があったのでしょうか。

今は1試合で放つ3ポイントシュートの本数は平均24、5本。これを30〜35本にしたいと思っています。その理由としては、このチームには3ポイントシューターが多いということ。それと今までのオフェンスを変えたいという考えがあります。

それまでは、いつもタク(渡嘉敷)が中心でしたが、それとは異なった新しいオフェンスも構築したいということです。このことは来日前にもタクとも話をしていて、彼女もこの新しいプレースタイルにワクワクしています。3ポイントシュートの平均本数も増えていますし、チーム全体ですごく楽しい進化ができると思っています。

渡嘉敷選手一人に頼らない、また偏らないオフェンスを目指しているわけですね。

その通りです。もちろん、タクはチームにとっては大事な選手だけれど、毎回彼女に頼ることは決していいとは思わない。これはチームのためでなく、タク個人の進化のためでもあって、彼女もアウトサイドもインサイドもプレーできるように。私自身もその進化を見ていきたいですね。

渡嘉敷選手だけに頼ることはしないけれど、試合では時に渡嘉敷選手の高さを生かすところもあるのではないですか?

それはあります。ただ、速い展開の中でタクやモエコ(長岡)にパスを入れることはいつでもできること。そしてそれは相手にとっても分かりやすいし、予想のしやすいことです。今のオフェンスは何でもできるオフェンスだと思っているので、毎試合、相手が予想できないプレーをしたいと考えています。

目指すところは相手に的を絞らせないオフェンス?

そうです。それとポジションも関係なく、みんな1番から5番ができるように。試合中でもポジションが入れ替わるようなオフェンスをしたいと思っています。それはチームやWリーグだけでなく、日本のバスケにとっても、レベルを高めることだと思っています。

ディフェンスについてはいかがですか? 元々ENEOSはディフェンスに重きを置いているチームです。

ハードなディフェンスは続けていきたいです。私自身もディフェンスは一番大事だと考えているので、これまでのENEOSのカルチャーを継承していきたいです。

今はヘッドコーチが求めるバスケットを構築している最中ですね。

チームの軸にしたいのは、『ボールをシェアすること』『私より私たち』『自分たちの新しいカルチャーを作ること』。そしてハードにプレーして、もちろん優勝を目指します。

皇后杯は10連覇中。Wリーグも昨シーズンは2シーズンぶりに優勝して、どちらも連覇が懸かるシーズンです。

勝利に向かって頑張っていきますが、シーズンの中は何が起こるか分かりません。今は優勝のことを考えるより、目の前の試合に集中しています。常にそうして目の前の試合にフォーカスしながら戦っていきたいです。

新しくENEOSをコーチすることになり優勝というプレッシャーはあるのですが、まだ優勝の話はチーム全体にもしていません。それより今は成長が大事なので、最終的には優勝をしたいですが、先ほども言ったように、自分たちのカルチャーをしっかり作ることが先だと思っています。

話は変わりますが、サンロッカーズ渋谷に続いて日本でヘッドコーチを務めますが、日本の生活にはすでに慣れましたか?

バスケットのコーチの日常は、どこの国にいてもそこまで変わらないと思います。常に映像を見たり、遠征に行ったり。忙しいスケジュールの中で生活していて、それはNBAやENEOSでも大きくは変わらない。どこの国いてもバスケのコーチは休めないんですよ(笑) ただ、また柏市に戻ってくることができて、本当に良かったと思っています。柏は身近な街で、美味しいレストランや温泉の場所も知っていますから。
(※サンロッカーズ渋谷の練習拠点はENEOSと同じ千葉県柏市)

日本のバスケット界は、今年の夏に男子日本代表がパリ・オリンピックの出場権を獲得。2年前には女子日本代表が東京オリンピックで銀メダルとバスケットの熱が高まっています。

日本のバスケット界にとって、今は良い時期を過ごしていますよね。男子日本代表がワールドカップでヨーロッパのチームに勝ったことも素晴らしいことだと思います。もちろん、女子も東京オリンピックの銀メダル、アジアカップでの結果などが、さらにWリーグを大きなものにしていると感じます。

最後に、ファンに向けてのメッセージをお願いします。

ENEOSのファンはトップファンだと思っています。試合ではどの会場でもファンの方が応援に来てくれていて、本当に感謝しています。また会場でお会いしたいと思っていますので、引き続き応援をよろしくお願いします。それと、勝ち続けて優勝を届けたいと思っています。

ティム・ルイスヘッドコーチのプロフィールはこちら

下條海/通訳「アメリカのデューク大学出身で、尊敬するコーチKの元で4年間バスケット部のマネジャーをしていました。そのトップ組織で得た経験を生かしてENEOSでも力になりたいと思っています。勝つことは楽しいこと。勝つために全力で頑張りたいです」

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