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林咲希×長岡萌映子『キープレーヤーが思う“プライド”の継承』

皇后杯は9連覇中だが、Wリーグではここ2シーズンで優勝を逃したENEOSサンフラワーズ。両大会での日本一獲得が宿命のチームにおいて、第24回Wリーグ(2022-23シーズン)は絶対に負けられない戦いとなる。

そのシーズンに向けて特別な思いを抱いているのが林咲希と長岡萌映子だ。ENEOSで6シーズン目を迎える林は3ポイントシュートを得意とするポイントゲッター。昨シーズン終盤はケガにより戦線離脱となったため、現在は復帰に向けて体作りから行っているところだ。

一方、今シーズンより移籍でチームに加入した長岡は得点力のあるオールラウンダー。トヨタ自動車アンテロープス時代は、Wリーグ連覇にも貢献している。

東京オリンピック銀メダリストでもあり、キャリア、実力ともに十分の2人に、シーズンに向けての思いを聞いた。

長岡「(ENEOSへの移籍は)大きなチャレンジ」

長岡選手、まずは移籍の理由を教えてください。

長岡歴史あるチームの中で優勝に少しでも貢献できたらと思いました。熱心に声を掛けていただき、必要とされるありがたさもすごく感じましたね。

実際に入団しての感想は?

長岡ついにこの日が来たかと。ENEOSに入ることは夢にも思っていなかったので(笑)。今回の決断は、人生で一番考えたといってもいいぐらい悩みました。大きなチャレンジだと思っています。

林選手は、4月9日に右足首疲労骨折を発表。近況を教えてください。

昨シーズン、疲労骨折が判明した時点では、プレーオフに向けて調整するつもりでした。でも、動くと痛みが取れず、動けるかどうかのテストで1対1をしたときも痛みが出たり、つまずいたりして。そこで(欠場の)判断をしました。ENEOSの一員として最後まで戦いたかったし、急いで治しても中途半端になるので、手術はシーズン後に。その間、(日本代表の)恩塚亨ヘッドコーチとも話をしました。

私の中でENEOSで活躍したいという気持ちが本当に大きくて。キャプテンだったので日本代表への思いもあったのですが、しっかり治して新しい自分をみんなの前で見てもらおうという考えが強かったです。

以前、ケガなどでなかなか優勝に貢献できていないと言っていました。

そうなんです。トム・ホーバスさん(前女子日本代表ヘッドコーチ)のときに日本代表として花開いた感じでしたが、これまでの5年間、足首が痛いなど、ENEOSではどこかで離脱していたので、申し訳ないなと。それなのに日本代表で活躍するのが自分でもよく分からなくて…。私はENEOSあっての日本代表だと思っていて、日本代表での力をENEOSでも出せるようになったのがここ2、3年。シーズンを通してENEOSで100%の力を出したい、みんなのために戦いたいという気持ちは強いですね。

2人とも年齢的にもキャリア的にもチームを引っ張る立場です。

長岡私はトヨタ自動車で若い選手たちがどうやったら気持ちよくプレーができるかといったことを自分なりに学んできたつもりなので、ENEOSでも一緒に練習をしながら若い選手の良さを引き出せたらいいなと思っています。

自分のプレーに関しては、トヨタ自動車では黒子に徹することが多かったのですが、ENEOSでは以前所属していた富士通のときのような自分を出していくプレーをできるのかなと思っています。でも、チームが上手く回るようなプレーも得意としているので、できることを最大限出していきたいです。

得点面での期待が高いです。

長岡点を取れる人がいる中で自分勝手なプレーをしようとは思わないので…。まずはタクさん(渡嘉敷来夢)には積極的にパスを出します(笑)

モエコさんは人のためにという考えが強いので、試合中にもっと自分を出したプレーをしてほしいなと思ったら、言いますね。

長岡言って。そういうのも試合でつかめていけたらいいよね。

やってみないと分からないからね。個人的にはモエコさんが来たことで、私自身もこれまでと違った形で後輩たちにフォーカスできるし、荷が下りたというか。これからモエコさんとたくさん話をして、コミュニケーションを深めていきたいです。

プレーでは早く良い状況で復帰すること。シーズン最後まで戦い抜くことができる体を作ることが目標です。昨シーズンは確率よくシュートを決めることができたので、それは継続して。あとはもう少し落ち着いて、かつ力強いプレーをしたいです。

林「(チームとしての)勝ち癖をつけたい」
改めてお互いのプレーや性格などをどう感じていますか?

恥ずかしいな(笑)

長岡ほんと恥ずかしいね。

何でもいいよ、けなしても(笑)

長岡いやいや。キキ(林)は責任感が強い。でも、その責任を背負い過ぎることがあるなと感じたので、荷が降りたと言ってくれたけれど、私が入ったことで手助けができれば。プレーでは、キキが気持ちよくシュートを打てるように、アシストもするし、スクリーナーでも何でもやるので、あらゆる点でサポートできたらいいですね。

いいこと聞けた! 楽しみですね。だって来てくれると思わなかったから(笑)。心強いし、循環も良くなると思います。モエコさんは3ポイントシュートもあるし、ドライブもある。バスもできて経験もあるので、私がモエコさんの持っているものを引き出せる一人になれたらと思います。

頼もしい存在ですね。

私は日本代表に入ってまだ2、3年。モエコさんはずっと前からいるので、最初の印象は怖かったんですよ。

長岡ほんと?

近寄り難いというか。気持ちが強く、オーラもあって。『すごい人がいる』みたいな。

長岡選手は林選手が日本代表に入ったときの印象は?

最初の方、私の存在ありました? 大丈夫?

長岡(林が在籍していた)白鷗大学と練習試合したことあったよね。そのときに『4番ポジションなのにめっちゃ外からシュート打ってくる』と思ったかな。性格は静かで黙々と頑張る。体育館の住人みたいな感じ。

長岡選手、ENEOSサンフラワーズというチーム名はよどみなく言えますか?

長岡まだ、言えないです。噛むかもしれない(笑)

意外とモエコさん、そういうところ気にするから。

長岡だって、まだ練習でもよそ者感が出てるんじゃないかと思うし…。

割と気にしますよね。だから、そういったところも私が支えていきたい。

長岡ありがとう。

いつもどおりでいいんだよって。

長岡若い選手は私がどういう人かはまだ知らないからね。キキみたいに、最初に怖いと思われるの、もう嫌だよ(笑)。

話は変わり、ENEOSは伝統あるチームです。

長岡Wリーグで11連覇をしてきたタクさんとレアさん(岡本彩也花)の2人と、若い選手たちとでは、プライドの差のようなものはあると思うんです。それは仕方のないことだけど、負けることが当たり前ではないということは、2人の必死さを見て対戦相手としても感じていたので、そこはキキと一緒に伝えていきたいですね。

タクさんとレアさんは勝ち方を知っているし、そのための練習も知っている。昨シーズンは、2人の熱量を後輩たちにうまく伝えられなかったことが個人的には悔しくて…。でも今は、モエコさんが入ってきたことで伝えやすくなったかなと感じています。

長岡私も何がいいのかは分からないけれど、2人が勝ち方を知っているのならば、2人が思うプレーをすれば勝てる可能性は上がるかなと。だって(ケガ人が多い中で)皇后杯優勝するって尊敬だし、その勝ち方を学べるので、私は必死にやるだけです。

対戦相手だからこそのENEOSのすごさを感じていた?

長岡相手の立場だと、ENEOSに負けて当たり前みたいなところは少なからずあると思うんです。だからこそ勝ったときは楽しいし、うれしい。そう考えると、ENEOSに1勝したら優勝したかのように喜べる、唯一無二の相手という感じでした。

林選手はここ数年で勝ち続けることの大変さを感じているのでは?

皇后杯では勝っていてもWリーグでは負けている。2年も負けているので、勝ち癖をつけたいですね。皇后杯は一発勝負で勢いでいけるところもあるけれど、Wリーグのプレーオフ決勝は集大成。どれだけ最後まで粘ってできるかだし、『圧』が強いことも大事。そこが最終的に『削られた』みたいな印象があるんですよね。どこで削られているのか分からなかったけれど、そこを分かっていくのが今シーズンなのかなと思っています。

では、最後にファンの方へメッセージをお願いします。

長岡他チームで優勝争いしていた私を受け入れてくださり、ありがとうございます。二冠獲得できるように自分のプレーを思う存分発揮していきますので、応援よろしくお願いします。私のことを少しでも早く知ってもらうために、私のことをちゃんと見てください(笑)

嫌でも目が行くよ(笑)。でも、二冠という響きはいいですね。そのためにもどの試合でも万全な状態で。泥臭い部分を忘れず、輝いたENEOSを見てもらえるように頑張ります。
足は順調に良くなっています。今は、走れるようになってすごく楽しいのですが、周りからは、やり過ぎないようにと言われてます。

長岡そう。体育館に住まないようにね(笑)

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