スポーツに関することを様々な人にインタビューしてお伝えする企画です
大久保監督に、チーム作りについて質問してみました!
常に勝つことを求められる指導者がどのように考えているのか、勝てる監督の考え方はとても参考になります。指導者の方はぜひ参考にしてみてください。
チームがわーっと盛り上がったりするのは大久保監督的には大丈夫なんですか?
サンフラワーズもそうだと思うけど、僕は勝者、王者であって、王道で勝ちたい。
ズルして勝つとか、相手を騙して勝つとかじゃなくて、正々堂々と戦って勝ちたいから、王者の風格じゃないけど、王者のあるべき姿みたいなのは、チームカラーとして求めたい。
ENEOSの伝統があるから、僕はフーッとか騒ぎ立てるようなのは好まないです。
喜ぶのは表現としてはもちろんいいけど、相手を見下すような、格下のチームとやる時にジャイアン野球をやるみたいなのは好きではありません。
淡々とやって、強いチームは勝った時もバスの中では、はしゃがないぞみたいな。
抑制しているわけじゃないけど、勝っても負けても節度あるというか、王者としての振る舞いをしてほしいなと思っています。
翌日も大事な試合が続く場合は、すぐに切り替えないといけないのもありますしね。
仮にフーッとテンションが上がった選手がいる時は、ビジッと言いますか?
人によりますね。
ビシッと伝えた方がいい人にはそうするし、発言や行動が相手や仲間を傷つける、いき過ぎた行為があればたしなめます。
自分たちのことを喜んでいるのはいいけど、楽勝でしたみたいな相手に失礼な態度は指摘しますね。
それぞれの選手への言葉遣いや接し方などは、普段の生活などで見極めています。
チーム作りをする際は何をしますか?
僕はプロのコーチを2年やったけど、あとは大学の監督、社会人の監督なんで、最初に自分の指導方針をプレゼンしています。学生に対しても変わりません。
例えば、学生は200人弱いて、そこからベンチ入りの25人を決めないといけない。だから、どういう選手ならベンチに入れるのか、条件みたいなのを提示して、目標数値みたいなものを伝える。
野球が上手いだけじゃなくて、例えば元気があるとか、相手の癖を見るのが上手いとかそういう選手でもベンチに入れるみたいな、条件を提示してあげましたね。
試合に出る選手がいる一方で、出られない選手も数多くいます。出られない選手にはどのように接していましたか?
レギュラーはほっといても頑張る、練習するんですよ。試合に出る子は目標もあって、学生であってもそれなりに頑張るんです。だから、試合に出られない、自分の力もなんとなくわかって下がったりするような子を極力ほったらかしにしないで、どちらかというとそちらと話をします。気をつけて見たりしていましたね。
今は選手が学生のように温度差があるわけじゃないので、そんなに難しくないですけど、試合に出ていないメンバーがいかにフォアザチーム、これは僕の信念でもあって、チームファーストでいてもらえるようにするか、大事にしています。
気難しい子もいるから難しいなとは思うけど、どうやったらその人が成功する、結果が出る、自信がついてやってくれるようになるかなみたいな、選手の成長をずっと考えているような感じもありますね。
大久保監督に意見を言ってくる選手はいませんか?
いますよ!
レポートとか見てこの表現はどうかと思うこともあるけど笑
そこでそういうことを書くっていうのは、ちゃんと考えているということだし、「はい」と「いいえ」しか言えないような選手はダメだと言っているし、自分の意見をぶつけてくるというのは言ってくれる雰囲気や関係性であるということで受け入れたりします。
これまでチーム作りをしてきて考え方が変わったことはありますか?
変わったかどうかはわからないけど、人間性をめちゃくちゃ大事にしています。
人としてルールを守るとか、社会常識に当てはまらない子もたまにはいる。寝坊するとか、時間にルーズとか、提出物を出さないとか…
それを瞬間的に排除することはなく、我慢というか時間をかけられるようになりましたね。
頭の中はそんなに変わっていないんですけどね、大学時代から。笑
やんちゃな子たちにも丁寧に接しているんですね。
やんちゃな子たちの気持ちもわかるからね。それこそ可能性がある子なんて、頑張ればプロで億を稼げるようになるんだから今遊ばなくても…、今じゃなくてもいいんだよみたいな。
意外と厳しい監督って、自分がしてきたからこそ、次どうなるかわかるからそうならないように抑制するためにぎゅっと締め付けているとか、そういう監督もいますよね。
それ以上はじけるといい方向にいかないよみたいな。
試合における不安や緊張ってどう思いますか?
緊張しないって聞こえはいいですけど、緊張はみんなするだろって思うんですよね。ただ、過度な緊張ってパフォーマンスが落ちるじゃないですか。
だから、その状況がわかった時にどう対処するかみたいな。それは僕一人では対処できなくて、自分でもどうするのか、セルフコントロールをできるようにしていかないといけないのかなと思います。
大久保監督は緊張しないんですか?
僕なんかは、今でも都市対抗とか負けたら終わりで緊張するんです。するんですけど、ネガティブなことも考えたりするんですけど、もう一方でドキドキ、ワクワクしているんですよね。
たまらん、この緊張感みたいな。笑
この痺れるこの感じおもしろいみたいな。笑
大久保監督が勝てるのはなぜですか?
選手からも監督が言うことはよく当たるとか言われることがあるんですけど、理論的にこのボールを投げたらここに飛ぶとか、そういう理論からわかることもあるけど、そうじゃない、空気を読むとか、今でいうと流れですよね。
そういうポイントの空気を感じる能力には長けていたかもしれないです。
今でも、ここ勝負どころとか、動くべきか動かざるべきかとか間違うことが少なくてプラスになることが多くて、人よりも勝てているのかなみたいな。
でも、何もしないで、何も考えないで、人よりも努力しないで、ただ寝て毎日を過ごして、何も学ばないで、選手が勝手に動いてくれて勝ってるわけじゃないです。
カンが冴えていると感じる時もありますか?
ありますね、優勝している時とかはゾーンに入ったみたいな感覚とかあります。うまくいっている時のこの感じみたいなのがあります。
ただ、ゾーンには簡単には入れないんですよ。笑
だから、そこに近づくようなルーティーンだったり、トレーニングだったりはします。
ゾーンがいつくるかは読めないね。笑
なんか降りてくるんですよ。笑
突然ですが…、大久保監督って怖いんですか…?
結構、監督が怖いとか思ってる選手もいるみたいだし…
でも、全然そんなことないですよ!
監督=怖いと思って、勝手にそう思い込んでいて。練習と試合は集中しているからなんとなく怖い感じに見えて、ミーティングで話す内容は反省点が多かったりして、できるのにできていない時は熱意を持って伝えるから怖いと思うのかな。
普段寮生活を一緒にしているわけじゃないから。
怖いと思われている中でのチーム作りは難しくないですか?
自分で計算してやってないから、素を出して接しているからそこに対して怖いと思っている選手は怖いでいいし、監督フレンドリーだなと思えばそれでいいし。
ある選手なんて、友達感覚で一番喋りましたね。あんまりそういう選手はいないですけど。笑
監督は選手にどう思われているのがいいと思いますか?
僕はね、あの監督と出会ってよかったなと思ってもらえるのがいいかなと思う。僕自身がそういう経験をしたからもあるけど、勝った負けたも大事だけど、人として成長させてくれたとか、またあの監督と会いたいなと思ってもらえるのがいいと思う。
人として出会えてよかったと思える監督が理想。
僕が彼を育てたとか、彼女を育てたとかじゃなくて、育つのは勝手に育つって思ってるんですよ。
成長するためのアドバイスや後押し、環境づくりみたいなものをしてあげる、してあげたい、そう思いながらやっています。
僕は一番負けず嫌いだし、勝ちたいと思っているけど、それ以上に彼らに優勝っていいんだよと、いい思いを経験させてあげたい。
いい思い出がないまま引退するって頑張ったことに対しての評価が…。あんだけ頑張ったのにという気持ちで終わってしまう。
極力、成功して、みんなで目標を達成したという感覚を味合わせてあげたい。そこで監督の好き嫌いを言われようが、負けたことに対して外野とかYahoo!のコメントで言われようが気にしない。
批判されるのってしんどくないですか?
そりゃあ、へこんだり、このやろうとも思うけど、それは僕自身も強くなって。いくら批判されても、自分が認められたい、自分が尊敬する人に一言褒めてもらえる方が嬉しい、それだけでいいやと思える。
僕は、自分が認めてほしい人が認めてくれる、その一言だけで頑張れるんです。
選手の指導法についてお聞きしたいのですが…
サンドイッチ法は、いいですよ!
最初にいいところを褒める、簡潔に注意をする、激励をする
これがサンドイッチ法です。
褒めて、注意して、激励するみたいな。
褒めることができない人もいる。注意して注意して注意して、さらにダメ押しする人もいる。おいっ!から入るのではなく、あのプレー良かったねから入るのを意識するといいと思います。
大久保監督は、意識しないでできていたんですか?
僕は意識的にじゃなくて、自然にできたかな。
そもそもできちゃったんですね。笑
そうなんです。笑
チームとしての反省は、どうおこないますか?
試合が終わって、ずっと立ってやるチームも多いけど、5分ぐらいで終わるならいいけど、試合やってる選手は疲れてるし、そこで立たせる必要はないと思うから、座らせたり、場合によってはベンチから離れて外野の方で全員座ってとか。僕が最初に言って、あとはコーチが追加することもあるし、今は担当コーチが話して、僕が締めることが多いかな。
でも、だいたい聞いてないんですよ。笑
だから、選手、監督、コーチが何を言ったかメモを取ることを当番制にして、全体のノートみたいなところに共有しています。
なので、メモをする人が増えましたね。笑
そこでも、センスだったり、文章能力が出たりします。この子は考えるのが苦手だなとか、選手の個性が見えてくる場面でもありますね。
個人の反省もするんですか?
面談みたいなものはしますね、1年に1回とか2回とか。あとは、コーチは強化練習のメニュー決めで個別でちょこちょこやったりしますね。心配ごとがある時とかも。
それに、褒めるのとおだてるのをうまく使い分けることも意識してます。
褒めて伸ばすのはめちゃくちゃ良くて。ただ、ある年齢層だったり、タイミングによってはおだてるのが必要なこともあると思う。会話中におだてるのを織り交ぜる時もあって、いい関係性を築きたい時とかには有効な場面もあるね。使い分けは必要だけど。
インタビューを通して、大久保監督は選手をよく見ていて大切に考えていることがわかりました。
そうですね、選手をどうやって救ってあげられるか、選手が迷っている時とかうまくいっていない時のサインを見逃さないのが大事です。そのためには、しっかりと見てあげるのが大事。見ていないと、アドバイスもできないしね。
目の前に出されたいい素材を、めちゃくちゃ手を加えていろんなものを付け加えておいしくするのか、単純に素材の良さを引き出す、塩こしょうだけでいいですよみたいな。
僕はどちらかいうと後者で、余計なことはあまりしません。シンプルなものが一番おいしいじゃないですか、ちょっとだけ手を加えるぐらいでいい。
そして、その僕が選んだ選手には信頼を置いています。自分のチームの選手には心配じゃなくて信頼をしています。
信頼するのは大事。
信じるし、信じる力みたいな。
ここ代打じゃないの?というところでも、信頼して使う場面があります。それはこれだと思った選手に対する信頼で、選手も応えてくれていると思います。
あと、僕は、挫折感というか出られない経験をしたことがあります。その経験が、出られない人の気持ちを強く考えられるようなきっかけになったのかな。選手に寄り添えるようになりました。
その経験がなかったら、できないやつはほっとけという監督になっていたかもしれません。
現在指導者の方に対して言葉をかけるのであれば、どんな言葉をかけますか?
選手のことをよく見てください、ですかね。一方通行で自分の学んできたことを伝えるだけ、こうしなさい、ああしなさいじゃなくて。
とくに子供は楽しくないとダメ。子供達が楽しそうにやっているのはいいよね。
大人のように機械的に動いて勝つのもいいけど、本当に楽しそうでちゃんと自分たちで考えてやっているチームでも負けちゃった、これはどっちの指導者が正しいではないけど、どっちに所属したいのかみたいな。
楽しむは、意味を履き違えると怖いけど、自分たちでやっている感を出しているチームは悪くない。
一方通行で伝える指導者がいるチームは勝っている間はいいけど、負けると厳しいし、時代にそぐわなくなってきている。だから減っていくと思う。
だけど、指導者としてはすごく優秀だったり、戦術面も優れていたりする。人をマネジメントする、人を成長させるのはわからないけど、チームを勝たせることに関しては長けている指導者。ここはすごく難しいと思う。
だから、指導者と選手の間に入る中間管理職の人間はとても重要です。
僕だって一人でずっと勝っているわけではなくて、間に入っているコーチ、マネージャー、選手との中間に入ってくれている大人にだいぶ助けられていることも十分わかっています。監督も大事だけど、適材適所があって、それを間違うとチームはどんどん悪い方向に向かいます。
監督の仕事とは何だと思いますか?
監督の仕事は、勝利と育成の両輪ですね。
育成を理由に負けるのもいけないし、勝利を理由に育成ができていないのもよくないと思うから、そこのバランスを考えてやらないといけない。
でも、それを考えるのもおもしろいんですけどね。
インタビューを通して、大久保監督は選手を非常に大事にしている監督だということがわかりました。
選手のことをよく見て、選手のことを理解しているからこそ、信頼し、選手が信頼に応え、勝ちにつながっています。
大久保監督が勝ち続けられる理由がなんとなくわかった気がしますね。
現在指導者の方も、これから指導者になる方も大久保監督の考え方を参考にして、素晴らしい指導者を目指してください。