スポーツに関することを様々な人にインタビューしてお伝えする企画です
モチベーションは、バスケットボールを含めたスポーツだけに限らず、勉強や仕事でもとても大切です。
そこで今回は、京谷さんにモチベーションについて質問してみました!
実績も経験も豊富な京谷さんの言葉には説得力や力強さがあります。
選手、指導者問わず、モチベーションについて悩んでいる方はぜひ参考にしてください!
選手時代に競技をやめたいなと思ったことはありますか?
また、そのときはどのように対応しましたか?
そもそも競技をやめたいと思うときがあまりなかったんです。
ただ、北京が終わった後、37歳の頃かな、そこでもういいかなと次の道に進みたいなと。
もともとサッカーをやっていたから、サッカーの指導者という自分の道も考えていて、やめるつもりでいました。
なぜ現役を続けることになったの?
日本選手団の主将なんかもやらせてもらったりして、パラスポーツ界の中ではある程度自分も車椅子バスケも認知されるようになって、やるべきことをやったかなと。
そこでやめようかなと思ったときに、ある講演会に、日の丸に寄せ書きが書かれていて、Go to Londonって書かれていたんです。これ持っていかなきゃいけないのかなと。笑
辞めるとはいっていたものの、本当に辞めるか決断ができていなかった自分もいて…
それをもらった時にハッとなった それが2008年です。
そして、2008年の12月の年末に、所属していたジェフの仲間と集まることがあって、先輩から「これからどうするんだ?」と聞かれて「やめようと思っています。サッカーの指導者を目指そうと思ってるんです」と回答したんです。
「おーいいな!」と賛同を得られると思ったら、「やれるうちはやっといた方がいいぞ」と言われて、それでまたハッとなって。その人に言われたのが、「お前が現役を続けることが1番の社会貢献になる」でした。
果たして僕は車いすバスケット界、パラスポーツ界に何か残せたのかなと。何かその後に続くものって作れたかなと考えたときに作れていなかったんです。
ロンドンって考えた時にもう41歳なんですよね。だいたい30後半で引退することが多くて、それが41までできるのかと考えたときに不安もあって、後ほど悩むのですが…。
なんで僕はここで満足しているのかなって。
事故を起こしたときは、実はプロサッカー選手になったことに満足して夢とか目標とかを見失っていました。
年代別の代表には入っていたが、A代表に入るとかワールドカップに出るとか新たな目標ができていたら、また違った人生だったのではと思ったんです。
それがサッカー時代できなかったことを車いすバスケットではやろうと思っていたくせに、何を満足しているのかと自分自身で感じた。
そこで、やらなきゃと思いましたね。
一度引退を考えた後のロンドンに対してのモチベーションはありましたか?
今までの大会は、それぞれテーマがありました。
シドニーは、ただがむしゃらにやる、自分の場所を探すために。
アテネは、世界で自分がどのくらいやれるのか、通用するのか。
北京は、チームがどれだけいけるのか。
今回はどうすると考えたときに、今まで応援してくれた人、支えてくれた人に感謝を伝える最後の大会にしようと思ってロンドンを目指しました。
今、肘も肩も首もだめなんです。笑
MRIとって第5第6胸椎の椎間板ヘルニアで、肩は現役時代に断裂していたみたいで…。なんか痛いな~とは思っていたんですけど。笑
ロンドンを目指すときも怪我をしていました。
だけど、怪我を言い訳にしたくないし、そのときの選択肢はやるかやらないかだけ。
やるって決めたから言い訳は許さないと自分で決めて、怪我が悪化するのが先か代表に選ばれるのが先か、代表を外されたとしてもロンドンのパラリンピックに応援に行って、何か最後に伝えて締めくくろうと思っていました。
何でモチベーションが上がったり下がったりするか、周りの人たちの応援とか支えとかがひとつ。それと、僕は自分が目指している場所がどういうとこなのかを再度考えたときに、もう1回目指したいというモチベーションになりました。
絶対的な目標がなければ、たぶんどんなに頑張ってもなかなかモチベーションを上げていくのは難しい。モチベーションを保つために、自分の絶対的な夢とか目標を作っておくことが重要です。
目標を作るのは簡単ではないと思うのですが、はっきりした目標を作るにはどうしたらいいですか?
高い目標ばかり考えているから、目標を作るのが難しいんだと思う。
自分の身近なところの小さな目標を積み重ねていくと、最終的にここに行きたいという方向が見えてくる。
そしたらそこにポンとまた目標を立てる。
もちろん、最初に最終的な目標を設定する人もいます。
そこまでにいくために長期的なプランを立てて実行して。
ただ、そうじゃない人は、とにかく積み重ねていく。
僕はなぜそれができるようになったかというと、事故を起こしたときにこれから先の人生が全くわからない、夢も希望もないし、目標なんて立てられなかった。
だけど、それをそのままにしていても何も進まない。
だから、今できることをやろう、今できることをとにかく全力でやろうと。
たとえば、車椅子に乗ることだったり、そんな小さな目標を立てて、乗れるようになったら自信になって。
自信を持つ感覚が出てくるようになると新たな目標を立てやすいんです。
人並みの生活を送れるようになろうと妻と目標を立てたら、人並みの生活ってなんだろう?と、どういうことだろう?と考えるようになりました。
こういうことだと答えが出ると、じゃあやってみよう!
できることが増えてくると、人間は欲が出てくるから次の目標、また次の目標となる。
結果、最終的な目標を作れるようになるんです。
目標とか夢ってすごく遠くのようなものだと思いがちだけど、夢はモヤっとしている、なれればいいなとか妄想みたいな感じ。
なりたいなと思ってちょっとやってみようとしたらそれは目標に変わっている。
そこにいくために、こうしていこうという人もいる。
全く見えない人はとにかく今できることをやっていけば、必ずそういう自分を応援してくれる人がよってきます。
その人たちが目標に導いてくれることもあるから、そんな難しく考えることはないですよ。
ロンドンパラリンピックを決心するきっかけだったり、応援してくれる人が目標に導いてくれたりというお話がありましたが、京谷さん自身はいきなり周りの人のために頑張ろうと思えましたか?
最初からではないですね。
若いときは、プロサッカー選手になったのも僕の才能ですし、周りの力を借りていないと思っていました。
何がきっかけで心境が変化しましたか?
それはね、大きな挫折をしたとき。
事故があって、それまで見えなかった人の優しさとかを直に感じられるようになったんです。
本当に何もできないんですよ、寝たきりで。
小腹空いたなと思っても車椅子に乗れないときは買いに行けず、そんなときに妻だったり、仲間だったり、看護師さんだったり、ドクターだったりそういう人たちがいろんなことをしてくれてると気づけました。
それが一般の人も同じことがあるかというとないかもしれません。
大きな挫折とか失敗をしろとは言いませんけど、挫折とか失敗する人って必ず何かにチャレンジしている人。
チャレンジしていない人は挫折とか失敗って感じられないから。
チャレンジして何か行動を起こしていたら、絶対何か失敗したりうまくいかないこともあります。
そんなときにいろんな人が助けてくれる、そういったことを感じながら心境が変わっていくと思います。
目標を立てること、周りからの応援や支えがモチベーションになっているとのことでしたが、他にもモチベーションを保つ方法はありますか?
自分はどうしたいの、どうなりたいのと自問自答することです。
僕の場合、『やりたい!』となるんですよ。
現役のときって、ちょっと疲れたなと思って、時にはサボることもあったんですが、サボるとサッカー時代からそうなんですけど、1日目は平気でも2日目、3日目からはなんかモヤモヤしてきて…。
やっぱサッカーやりたいんだな、バスケやりたいんだなってくるんです。
講演をしていても、中学生とか高校生からよく質問があるんです。
そのとき、うまくいかずにつまずく瞬間があるなら、「もう休んじゃえ!」とよく言います。やめればいいじゃんと。
すると、「いいんですか?」と聞かれるから、「いいですよ。」と答える。
それでダメならそれは本当に自分がやりたかったことではないと思うから、休んでみてと。
自問自答する時間は、一人の時間をしっかりとって、されていますか?
そうですね、お風呂とか寝る前とか。そういう時間は結構あります。
常に自問自答する癖をつけておくと、癖は習慣になります。
自分の内面としっかり向き合うことでモチベーションを維持できるんですね!
ちなみに、モチベーションを保つためにリフレッシュすることはありますか?
どうしても自分だけで処理できなくなったら、家族ですね。
妻と旅行に行くとか、ご飯を食べに行くとか。
奥様にサッカーやバスケットボールの話はしますか?
しますね。
基本人間って弱いと思います。どんなにスーパープレイヤーでも、絶対弱いところはある。
最初からメンタルが強い選手なんていないと思うけど、僕はその強さを持てる選手は自分の弱さをわかっていてそれをさらけ出せる選手がメンタルの強い選手だと思います。
ちゃんと弱い自分を受け入れてそれにどう対処していくのか、処理能力が高い選手にスーパープレイヤーは多いと思いますよ。
京谷さんのお話は、どれも説得力があり、参考になるお話ばかりでした。
はっきりした目標を立てる方法や自問自答することでモチベーションを保つ方法は、多くの方が参考になったのではないでしょうか。
自分のできることを全力でやること、自分と向き合うことを意識して、自分のやりたいことにチャレンジしてみてください!