ENEOSバスケットボールクリニック

聞いて! 答えて みんなの声

バスケットボールに関することを様々な人にインタビューしてお伝えする企画です

ディフェンスってつまらない、おもしろくない…
「クリニックQ&A」にもそんな声が多く寄せられます。
そこで現役時代ポイントゲッターを守ることが多かった大山コーチにディフェンスについてお話を聞いてみました。

第3回 ディフェンスの楽しみ方

第1回はディフェンスの目的とその技術 第2回は選手たちに伝えたいことを大山コーチにお聞きしました。3回目は大山コーチの現役時代の事をお聞きします。

指導者との出会い

私は中学生の時にバスケットボールを始め、当時、東京都中野区立第三中学校を率いていた伊藤敏幸先生にマンツーマンディフェンスの基本を叩き込まれました。
実業団時代に出会った、金平鈺(キムピョンオク)、丁海鎰(チョンヘイル)両コーチにスティールのやり方、オフェンスとの駆け引きや間合いを学びました。これは非常に衝撃的でした。また、日本代表で指導を受けたドエン・ケーシーには、マンツーマンディフェンスのローテーションの醍醐味を教えてもらいました。

私は、素晴らしい指導者との出会いという幸運に恵まれましたが、もしそのような機会がなかったとしても、選手自身が意識して経験を積み重ねることで、ディフェンスの面白さが実感できるチャンスはあるはずだと思っています。

駆け引きの面白さ、楽しさ

マンツーマンディフェンスをしているときに私が感じるのは、「ただつく(守る)って面白くないじゃん」ということでした。ディフェンスは、オフェンスの動きを判断してから動くので、いつも受身になります。自分の思い通りにいかないので面白くなかったんだと思います。
そんな中、相手チームのエースを守ることが増えていきました。エースというくらいですから相手は攻撃力の高いプレーヤーです「ただつく(守る)」だけでは守れないことも増えてきました。実業団に入りたての頃は、毎日ひたすらどうしたら守れるのかを考えていました。その結果、「やりたいことをやらせない」「受身にならないように、仕掛けるディフェンスをしよう」と意識して取り組むようになりました。

相手がやりたいことをやらせないようにするために、ボールを持たれる回数を減らす、究極を言えばボールを持たせない「ディナイディフェンス」を身に付けるために必死で練習を重ねました。リングの場所、マークマンの位置、ボールの位置などを見て自分のポジションを決め、さらに、自分の体の向き、腕の使い方、手の使い方、フットワークを組み合わせていきました。
どれだけ練習しても、ボールを持たれてしまうこともありました。ボールを持たれないように最大限の努力をしたけれど、ボールを持たれてしまったら、ボールマンとの間合い、プレッシャーのかけ方(ハンドワーク)によって、相手をできるだけ窮屈にして自由にプレーさせないようします。結果的にマークマンがリングへの攻撃をやめ、他の選手にパスをしたら、うまくいったと思うようにしていました。

海外のチームとの試合では、選手の特徴がわからないときもあります。そんなときは、試合が始まったと同時に、マークマンの特徴を見極め、把握します。ポジション、身長、スピード、シュートの正確性など、守るときのヒントになる情報をできるだけ早く習得できるように分析します。また、マークマンだけなく敵のオフェンスパターンもできるだけ早くみつけ、それをやらせないように守るのです。

私は、身長があまり大きくないため、同じポジションの選手とマッチアップするとほぼミスマッチ(身長差がある)でした。そして手も長いためハンズアップしていても頭の上からシュートを打たれてしまいます。ボールを持たれなければシュートは打てない、「ボールを持たれたら負け」と思いプレーしていました。

スティールの面白さ

沢山の練習と試合を繰り返し、マークマンにボールを持たせないように守ると、スティールできるタイミングがわかるようになってきました。私は、ポイントゲッターを守ることが多かったので、取れなかった時のリスクを考えながらも、チャンスがあったらいつでもボールを奪うということを意識して、確実に取れると判断したときはスティールを試みていました。どのタイミングで動けばボールを奪えるのかについては、実際にやってみなければわかりませんから、練習中に繰り返しやってみて、感覚をつかむしかありません。
スティールが成功すれば、一気に自分たちに攻撃権が移り、自分たちの得点のチャンスにつながるので、得点と同じくらいの達成感がありますし(実際に、相手の攻撃を防いでいるので2点分の価値はあります)チームの雰囲気も良くなります。

最後に

試合中は、オフェンス、ディフェンス両方やる必要があります。その両方がうまくできるようになればもっと強くなれますよね。もし、ディフェンスをつまらないと感じている人がいたら、「楽しく思える何か」を見つけだしてくれたら、うれしいです。また、ディフェンスはチームの考え方によってもさまざまなバリエーションがあると思います。指導者の方ともイメージをすり合わせることも忘れずに行ってください。

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