ENEOSバスケットボールクリニック

聞いて! 答えて みんなの声

バスケットボールに関することを様々な人にインタビューしてお伝えする企画です

続いてお話をお伺いしたのは、現役時代ENEOSの前身であるジャパンエナジー/共同石油の選手として活躍し、現在はJBA女子ジュニア専任コーチとしてアンダーカテゴリーの日本代表を指導する萩原美樹子さん。
アウトサイドのシュートについて伺いました。

シュートチャンスの作り方について【アウトサイド編】〜どこを見るか、何を見るか〜

バスケットボールではいろいろな技術や体力、メンタルの力などが要求されますが、プレーの要の一つと言えるのがシュートです。どんなに素晴らしいドリブルをして相手を抜き去っても、どんなに華麗なパスが通っても、最後のシュートが外れてしまっては得点にならないからです。
また、ほとんどのプレーヤーたちが「楽しい」と感じるのが、自分の放ったシュートが成功した瞬間なのではないでしょうか。リングに入るか入らないかということで、自分の技術のレベルがはっきりと分かっちゃうツールでもあります。この分かりやすさもシュートの魅力の一つですよね。

ボールが空中にきれいな弧を描いて、宙に浮いている直径45㎝の輪に吸い込まれていく光景はとても美しいものです。まるでボールが空間を切り取っているかのよう。ボールが空中に浮かんでいる時は、誰も手を触れられません。(レブロンみたいな強烈なブロッカーがいなければ、ですが…)まるで神様の領域のようではありませんか? バスケットプレーヤーならそんなうっとりするような芸術的なシュートを、自分の手で、たくさんリングに沈めたいものですよね!

シュートと一言で言っても、実際にはシュートそのものを打つ技術以外に、いろいろな要素が絡んできます。自分の好きな場所で動かずにボールをもらって、その場でエイッとシュートを打って、100発100中入るならこんなに楽なことはありませんが、そうはいきませんよね。ゲーム中はDEFもいるし、自分以外にもボールが欲しい味方もいるし、当然自分も動いていますし、入れなきゃ! というプレッシャーなんかもあったりする。なかなか簡単に自分の好きな形でシュートには持ち込めません。
今回はアウトサイドでプレーする選手について、シュートに行くまでのプロセス…スクリーンなどを使わず自力でシュートを打つまでのチャンスの作り方、について考えていきたいと思います。以下に述べる3つのことを明日の練習からちょっと意識してみてください。

スペースをとる

特に育成世代のアウトサイドプレーヤーに、まず意識してもらいたいことは「しっかりとスペースをとること」です。シュートには直接関係しないようにも思えますが、オフェンスのすべてにおいて必要な、基本的な考え方です。具体的には、両隣の味方とは5〜7m。これくらい充分にスペースがあると、ドライブなどを仕掛けた時に他のDEFにヘルプされにくくなります。もちろん、ヘルプが来れば味方にパス! です。センターの回で大崎コーチも「どこに動けばスペースを作れるのか」「味方の邪魔にならないように動く」ということを考えると言っていましたよね。アウトサイドのプレーヤーはたいていの場合、インサイドのプレーヤーより人数が多いはずなので、一人一人がしっかりと隣とスペースをとることはとても重要。これを意識するだけで、俄然プレーがしやすくなりますよ。目安としては3ポイントラインの1〜2m外側…もっと外でもいいくらいです。3ポイントラインを踏んでしまっていたら、自分も味方も十分にプレーするスペースを確保できていないと思ってください。ドライブしてDEFを収縮させて、外にキックパス! これだけで十分なシュートチャンスを生みだすことができます。

そして、例外もありますが、原則的にボールには近づいていかないこと。ボールが欲しいとどうしてもボールを持っている味方に、ずるずると近づいて行ってしまうのですが、それはむしろDEFを助けて、味方のプレーをつぶしてしまうことにつながります。動かないことに罪悪感を持たないこと。スペースをとって「待つ」ということを「している」のです。なんとなくボールに近づくのは我慢しましょう!

タイミングよくボールレシーブ…すぐに攻められる格好(トリプルスレット/パワーポジション)で!!

自分をマークしているDEFにもよりますが、クローズドスタンスで強くディナイなどをされている場合は、Vカットやロック(DEFの前に出ている足を、自分の、DEFに近い方の足とおしりと手で一度しっかりと止めて動けないようにしてから、外に飛び出してボールを受ける技術)などをして、「タイミング良く」ボールレシーブしましょう。そう、「タイミング良く」です。これ実は結構難しい。味方(ボールマン)が自分の方を見ていない時に完璧にDEFを振り切ったとしても、後ろに目がついていない限りは絶対にパスは来ないからです。ボールマンが自分の方を見た瞬間に、「タイミング良く」自分のDEFを振り切っていること。こっちを見た時に、よっこらしょ…とVカットしに入るのも問題外。パッと振り切って「はい!」とボールを呼べたら完璧です! それでもDEFが粘ってディナイをしてきたら…バックカットが効きますよね。

タイミングよく受けるコツは、ボールが自分の隣の味方のプレーヤーに来る前…つまり隣の隣、「2パスアウェイ」なんて言ったりもしますが、この時にすでに準備をしておくことです。隣(1パスアウェイ)の味方にパスが来るかもな…と予測し準備をしておけば、隣のプレーヤーにボールが渡ったときにすぐに行動が起こせます。実際に隣にボールが来てから考えたり動きだしたりするのでは遅いのです。

また、この時はできるだけ自分がすぐにDEFを攻められるような、有利なスタンスでボールをもらいましょう。もらいざまというのは、DEFが一番準備の出来ていない瞬間でもあります。ヘルプのDEFもまだヘルプポジションに入れていないかもしれません。もらうと同時にドライブを仕掛けたり、それに対応して目の前のDEFが下がったらすぐにシュートの態勢に入ったり。常にDEFの先手を取ることができますよ。

ボールレシーブしたときに「何を」見る?

いい振り切り方をしてタイミングよくボールを受けられた。次、どこを見ますか?

「リング」という答えは、半分は正解で、半分は不正解です。
見る場所は最低2か所。1つ目は自分の目の前のDEF、もう1つは「自分とリングの間にヘルプDEFや味方がいるかどうか」です。リングだけを見ようとすると視線が上に行ってしまうため、特にこの2つ目の視野は生まれません。リングを見ることによって間接的に2つ目の視野が生まれ、同時に目の前のDEFも見ることができるということであればいいでしょう。(という理由で半分正解。)

2つ目の視野の目的は「ヘルプDEFがいるか」「ゴールの近くで自分よりももっとよい状況でいいポジションをとっている味方がいないか」を確認することです。いいカットをしてノーマークになっている味方がいたり、大崎コーチくらい頼れるセンターがしっかりとDEFを背中に押し込んでボールを呼んでいたら、これはもう迷わずパスです。リングに遠い自分よりも確率のいいシュートが望めますもんね。また、この視野を持っておけば、華麗に自分のDEFを抜き去ったのにヘルプDEFに勢い余ってドーン! とぶつかってしまう、なんて事故も避けられます。ヘルプがここまで来ているということは、必ずどこかに空いている味方がいるということ(前に述べたようにしっかりとスペースがとれていれば、ですが…)。ヘルプポジションが甘ければ、ドライブで攻めていって、フィニッシュを工夫してシュートを決め切ってくるか、あるいはヘルプDEFを引き付けて味方にアシストパスというプレーも生まれるでしょう。
ボールをもらったら、自分の目の前と遠くの2か所を同時に見てプレーの判断する、ということをしっかりと習慣づけたいものです。もっと言えば、もらう前にこの2か所を確認できていたなら最高! 特に、ドライブ等で自分の目の前のDEFをやっつけた時に、そのままシュートに持っていくかあるいは味方にパスをするかの判断は、かなり重要です。そのためには普段から、最後まで競った状態でシュートに持ち込むフィニッシュスキル…DEFに接触しながら、ステップを変えてブロックのタイミングを外したり、バックシュートに持ち込んでみたり、打つ手を工夫してみたり…を磨いておきましょう。ドライブで抜いた後1、2で踏み切ってワイドオープンでレイアップに行ける状況は、相手DEFのレベルが上がれば上がるほど少なくなってくるはずです。

さて、以上、アウトサイドのプレーヤーがシュートに持ち込むまでのプロセスについて述べてきました。シュートそのものの技術とは一見関係がないようにも見えますが、「チャンスを作ってシュートに持ち込む」という視点では、どれも育成世代のうちに身に着けておきたい基本の技術です。
特に「次のプレーを予測し、準備をしておく」「見て、判断する」ということは、どんなプレーにおいてもとっても大事な要素になってきます。「なんとなく」プレーしないことを心掛けてみてください。

次回は、チャンスに決められるようになるためにはどんなことが必要か、そして少しマニアックですが、オフェンスリバウンドをとった後のシュートについて、考えてみたいと思います。

(文:萩原美樹子)

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