第10回優勝「V10 2012年(平成24年)第83回都市対抗野球大会」

都市対抗で9回目の優勝を果たした2008年は、日本選手権でもベスト4入りと、新日本石油ENEOSは名門の威容を取り戻す。2009年は都市対抗こそ三回戦で惜敗したが、東京スポニチ大会、岡山大会に優勝。2010年は都市対抗出場を逃すも、日本選手権でベスト4、東北大会では優勝と、高いチーム力を誇りながら黒獅子旗の奪還を狙っていた。

大久保秀昭監督は、プロを目指す選手にはチャンスを与え、チームの勝利と選手の育成を両立していた。だが、JX-ENEOSとして臨んだ2011年の都市対抗で一回戦負けを喫すると、日本一だけに注力すると公言する。日本石油の時代から企業スポーツは野球に特化してきたが、経営統合によって女子バスケットボールも保有することになる。その女子バスケットボール部は、Wリーグや全日本選手権大会で圧倒的な戦績を残しており、野球部にもさらなる躍進が求められたのだ。

そうして迎えた2012年のシーズンは、例年のように3月の東京スポニチ大会に臨むも、リーグ戦3位で準決勝進出を逃す。だが、打線の軸を担う井領雅貴(現・中日)によれば、大会前に大久保監督はこう言ったという。
「この大会は、多くの選手を試したいから勝敗は問わない。日本選手権の出場権は、4月の四国大会で優勝して獲ればいい」

その言葉通り四国大会に優勝し、最高殊勲選手賞は井領が獲得。大久保監督が掲げたテーマを、選手がしっかりと現実にしていく。地に足の着いた戦いを展開するようになったチームは、山梨県と合併して西関東地区となった都市対抗二次予選も第二代表で突破。第83回都市対抗野球大会に出場する。

1回戦、3回裏 池邉の2ラン本塁打で先制一回戦では、創部4年目で初出場の名古屋市・ジェイプロジェクトを迎え撃つ。3回裏二死一塁から、三番に入った池邉啓二が技ありの2ラン本塁打をライトスタンドへ運び、幸先よく先制する。先発を任されたルーキーの三上朋也(現・横浜DeNA)は、そのリードを守ろうとするのではなく、攻めに徹した投球で無失点を続ける。7回表に1点を返されると北原郷大をリリーフに送り、9回表は大城基志を投入。「初戦はどうしても硬くなる。ロースコアになるのは想定内」と大久保監督が語ったように、2対1で辛くも二回戦へ勝ち進む。

二回戦の相手も、2005年に創部した東京都代表の新鋭・セガサミー。先発の大山暁史は、のちにオリックスへ入団するサウスポーだが、JX-ENEOSの打線は立ち上がりからたたみかける。1回表にリードオフ・井領の中前安打から二死三塁とし、四番に座る山田敏貴が左前に弾き返して1点を先制。続く2回表にも一死一、二塁から前田将希の中前安打で2点目を挙げる。

一方、先発の大城は低目を意識した投球で、4回までひとりも走者を許さない。5回裏に二死一、三塁からレフト線に運ばれて1点を返されるも、正確な中継プレーで一塁走者は本塁の手前でタッチアウトにする。その後、1点のリードを保ったまま8回には北原につなぎ、9回に走者を出すと沼尾 勲を投入。またも2対1の接戦をものにする。

準々決勝、2回裏 井領の3ラン本塁打で逆転準々決勝には、門真市代表の古豪・パナソニックが勝ち上がってきた。実は、過去9回の都市対抗優勝のうち、4回はパナソニックから勝利を挙げており、勝てばビクトリーロードになる可能性の高い相手だ。1回表に先発の三上が2ラン本塁打を食らうも、2回裏二死二塁から山岡の中前安打で1点を返すと、白井史弥も左前安打でつなぎ、井領がライトへ逆転3ラン本塁打を叩き込む。この一発で試合の流れを引き寄せ、5回裏には主将・宮澤健太郎の二塁打など5安打を集めて4点を追加する。パナソニックも必死に反撃するが、8回途中から沼尾、北原とリレーし、9対5で縁起のいい白星も手に入れる。

準決勝は、前年の都市対抗で準優勝した東京都代表のNTT東日本だ。NTT東日本が井納翔一(現・横浜DeNA)、JX-ENEOSは大城と両先発投手が持ち味を発揮し、互いにチャンスは作るも、5回まではスコアレスで進む。6回表に二死一、二塁とした場面で、NTT東日本は投手を交代したが、JX-ENEOSは3ラン本塁打で先制し、8回表にも二死二塁から四番・山田の右前安打で4点目を挙げる。

ただ、NTT東日本も簡単には引き下がらない。8回裏は先頭からの連打で無死一、二塁に。ここで大城から北原にスイッチ。1点を返され、なお二死満塁と攻め込まれたが、北原が粘ってリードを守る。そして、9回裏に登板した沼尾も1点を失ったものの、4対2で逃げ切る。

新人ながら決勝に先発した三上朋也

決勝は、東京都・JR東日本との対戦となった。前年の王者で、勝てば1961〜62年の日本石油以来、50年ぶりに連覇の偉業が達成される。JX-ENEOSの決勝不敗神話は守られるのか、試合はJR東日本が吉田一将(現・オリックス)、JX-ENEOSは三上と、ルーキーの先発対決で幕を開ける。

1回に1点ずつを取り合うと、3回表にも一死満塁としたJR東日本は、石岡諒太(現・中日)の右前安打で2点を勝ち越す。4回からは、大会初登板の鶴田祥平(三菱重工横浜から補強)が緩急を駆使した投球で無失点に抑え、5回を1対3のまま終える。6回裏も簡単に二死を取られたが、ここから連打で一、二塁とすると、JR東日本は左腕の片山純一を投入。左打ちの宮澤が巧く流し打った打球は、三塁手のエラーを誘って1点差とする。

決勝、起死回生の逆転3ラン本塁打を放った山岡 剛次の打者は山岡だ。強打が自慢の捕手も、この大会は14打数1安打1打点とバットで存在感を示すことはできていない。しかし、「山岡を代えるつもりはまったくなかった」という大久保監督が信頼して送り出すと、起死回生の逆転3ラン本塁打をレフトスタンドに突き刺した。山岡はリードも冴え渡り、8回は大城が3人でピシャリ。その裏に山岡のタイムリーで6点目を奪うと、9回表は北原が締める。JR東日本の連覇の夢を打ち砕き、史上最多10回目の優勝。橋戸賞には先発、リリーフでフル回転した大城が選ばれた。

日本一に輝いた選手たちは、11月に開催された第38回社会人野球日本選手権大会でも三菱重工広島、ニチダイ、日本生命、トヨタ自動車と強豪を次々と連破して決勝に進出。またも勝ち上がってきたJR東日本との対戦も5対1で制し、1988年の東芝以来、史上2チーム目となる都市対抗と日本選手権の連覇を達成する。

黒獅子旗を高々と掲げる宮澤主将
V10を達成した野球部

【大会戦績】

1回戦2-1vs ジェイプロジェクト・名古屋市
2回戦2-1vs セガサミー・東京都
準々決勝9-5vs パナソニック・門真市
準決勝4-2vs NTT東日本・東京都
決勝6-3vs JR東日本・東京都

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